youth 13 ページ13
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「じゃあ先帰るね」
慎「おう、気ぃつけて帰れよ」
「うん」
今日から居残りだという慎太郎に手を振って、教室を出た。
私は今から、やらなきゃいけないことがある。
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「お待たせしました」
樹「おう、どした?」
「1つ、聞きたいことがあります」
そう、それは田中先輩に昨日のあれを確かめること。
もしかしたら見間違いかもしれないし、人違いかもしれないから。
そんな微かな願いだけを胸に、田中先輩を呼び出した。
「昨日の朝、どこにいましたか?」
樹「昨日の朝?」
「...はい」
心臓がうるさく鳴り出す。
...お願い。
お願いだから、教室にいたって言ってください。
樹「あー...もしかして、見られちゃった?」
「...え、?」
樹「空き教室にいたとこ見たの?」
もう、最悪。
私が見たあの光景は、紛れもない真実だったんだ。
付き合って間もないというのに、私は騙されてたんだね。
「なんで、浮気なんてしたんですか?」
樹「浮気?」
「私と付き合ってるのに、あんなこと...どう考えても浮気ですよね」
樹「そもそも最初から、本命なんて言ってないけど?」
体が凍りついて、涙すら出てこない。
私が今話してるこの人は、本当に田中先輩なの?
「だって、付き合ってって...」
樹「何、本気にした?悪いけどそういうのだるいわ」
...だめだこの人。もう何を言っても無駄だ。
思いっきり殴りたかったけど、深呼吸をして我慢した。
「...さよなら」
昨日作ったクローバーのしおりを、グッと握りしめてその場を去った。
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作者名:姫野 | 作成日時:2022年9月3日 22時