第14話 孤高の巫女 ページ16
緑の匂いを風が運ぶ。野原の中心に一人の少女が立っていた。年の頃は13歳。豊かな黒髪を風になびかせ、澄まし顔で前方をキッと睨んでいる。彼女に向かって妖の集団が迫っていた。少女は弓を構え、キリキリと引き絞る。
「来い、化け物め。この巫女つららが成敗してくれる!」
グワァと低いうめき声をとどろかせ、妖の集団が目と鼻の先に迫る。つららは矢を放つ。ピュッと鋭い音を残し飛ぶ矢は、集団のちょうど真ん中に突き刺さった。途端にそれは崩れ去り、後には妖の残骸が残る。つららは
「さすがだね、つらら」
「海か。この程度、なんでもない。ぼくはこの『神秘の玉』を守るだけだ」
「またそうやって線を引く。君の悪い癖だ」
海の言葉に苦々しげに顔を歪める。連れの少年はただニコニコと微笑むだけ。彼女は巫女と言う職業を
いつも澄まし顔をする彼女はひとりぼっちだった。そんな彼女を悲しく思い、海はつららの側にいるようにしている。それすらも快く思わないつららに海は手探りするしかなかった。
「つらら、いい加減その『神秘の玉』を手放したらどうだ。そのおかげでいつも妖に狙われているんじゃないのかい」
「余計なお世話だ。これはぼくに守れと託された物。それを捨てるわけにはいかない」
「……君も頑固だね」
「なんとでも言え」
ふんっとそっぽを向くつららに海は苦笑いを浮かべる。町にいる少女よりはいくぶん低めのつららの声は、淋しさを堪える子供のように彼には感じた。自分よりも幼くか細い少女に、一体誰が『神秘の玉』を託したのだろう。海はぽんとつららの頭に手を置くと労わるように撫でた。その瞬間、あっという間に耳まで赤くなったつららは海の手をはねのける。
「な、何をする! ぼくに何の権限があって……!」
「ごめん。そんなに怒らないで。13歳の女の子がこういう反応をするなんて思わなかったんだ」
「ぼくを見くびるな! 誰が13歳だ」
「え、でもそんな風にしか……」
海は目を丸くしたまま言葉に詰まった。目の前にいる少女が嘘を言っているようには見えない。怒りに染まった目を向けるつららに、海はただ黙り込むしかなかった。
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ROM民(プロフ) - 日向信乃さん» すみません、勘違いしていたようです。やはり巡回していると自分でも気付かない内に判断力が低下してしまうようですね…。反省し、改めさせて頂きます。ご迷惑をお掛けして、誠に申し訳ございませんでした。 (2015年11月12日 22時) (レス) id: 67f8438bca (このIDを非表示/違反報告)
日向信乃(プロフ) - ROM民さん» ご指摘感謝と言いたいところですが、この話のどこが二次創作にあたるのか教えて頂けないでしょうか? (2015年11月12日 20時) (レス) id: 149e2c85db (このIDを非表示/違反報告)
ROM民(プロフ) - はじめまして。「オリジナルフラグ」が外れていませんよ。二次創作ですので、棲み分けにご協力お願いいたします。 (2015年11月12日 20時) (レス) id: 67f8438bca (このIDを非表示/違反報告)
天宮信乃 - 。愁音 。さん» 久し振りー!琳空役のもんどす。名前変更しときます (2014年11月24日 15時) (レス) id: 8b41fe3180 (このIDを非表示/違反報告)
。愁音 。(プロフ) - お久しぶりです!忍役の者です!用は無いけど来てみましたー♪ (2014年11月23日 13時) (レス) id: d300b57f7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:信乃@琳空 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Assuming4/
作成日時:2014年6月29日 15時