第九話 ページ10
福沢が表情を変えないまま、内心ではどう秘書を説得し出口を準備して貰うか懊悩を繰り返していたーーちょうどその時。
乱「ねえ君、ちょっとずれて」
A『え、あ......はい』
乱「ありがとう、それじゃあ......」
乱「たのもう!」
福沢が振り返ると、社長室の入り口ーーAの隣に少年が立っていた。
年齢は十四、五ほどだろうか。田舎じみた防寒外套に学生帽。鏡を見ずに切ったのではないかと思われる不揃いの短髪に、年代物の書類封筒を提げている。
睫の長い切れ長の吊り目が印象的な少年だ。
乱「いや今日は莫迦みたいに風が強いねえ!この様子じゃあ二丁目の桶屋は大儲けだよ!それはいいけどこの会社の立地ほんとどうにかならないかなあ、海が近くて潮くさいし坂道はメンドくさいし道は憶えにくいし、ホントここの社長はどうかしてるよね!これだから横浜なんて住むところじゃないよ、あでも途中で逢ったカモメは気持ち悪くてよかったね、思わず弁当の握り飯をひとつあげちゃったよ、あんまりに気持ち悪かったから」
それだけの台詞をひといきに発したのである。
笑顔で。
社長室の前で。
秘書「ーーは?」
乱「『は?』じゃなくて、カモメだよカモメ。知らない?あの羽のある怪物。カモメって前世でよっぽど非道いことしたんだろうね、だってあいつの目よーく見たら結構狂気宿してるもんね!ところで話しは変わるけど握り飯いっこぶんお腹減ったんだけど何かない?」
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たりたり(プロフ) - 光華さん» ご指摘ありがとうございます。速攻訂正しますのでもうしばらくお待ちください。更新は、なるべく早めに出来るように頑張りますのでこれからも宜しくお願いします。 (2020年7月14日 21時) (レス) id: 00b9e7564a (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 後半の方が苗字変換されてませんよ?更新頑張って下さい (2020年7月14日 21時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たりたり | 作成日時:2020年5月31日 12時