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第七話 ページ8

A『は、はあ......そうですか』

秘書「そうなのです!絶対に書類は動かさないで下さいよ!」

A『とのことなので伯父様、ドアまでの距離は目測でおおよそ五歩。まあ、伯父様の鍛えられた脚力をもってすれば二歩で辿り着けなくはないでしょう。ですが、問題はこの書類の海のなか、どうやってドアまで辿り着くかです。途中の一歩とドア前に着地する一歩。この二歩が重要なのですが......』

福「わかった。やってみよう」

一歩目は壁際に設えられていた本棚の装飾に着地。次にドアとは少し離れた位置の客用椅子に両手をついて着地し、ぴたりと停止。そこから椅子の脚近くにあった書類と書類の隙間にそっと爪先を置き、片手片足を支えにドアまで手を伸ばす。

そして福沢は書類をそよりとも動かすことなく、隣の部屋へと立ち至った。

秘書「おおー」

ともかく、隣室に至ることは出来た。福沢はドアを開け放ち、殺し屋の姿を見た。

殺し屋は座っていた。
思ったよりも小柄だ。肩幅も小さい。黒い厚手の布袋を被せられているため、顔は見えない。

その部屋は応接室だった。福沢はわざと音を立てるように室内を歩いた。

福沢は殺し屋の背後側の壁に回り、いきなり壁に掌を叩き付けた。ばんっ、という遠慮のない破裂音が響く。

殺し屋は全く反応しなかった。身構えも振り返りもしない、平静そのものだ。頭の布袋のせいでこちらは見えないはずなのに。

手練れだ。
福沢はそう直感した。

福沢は視線を部屋の隅にある小物机にやった。
そこには殺し屋の持ち物であろう、道具一式が置かれていた。

二挺の拳銃とホルスターは使い込まれて古いが、手入れが行き届いている。他には小銭と鍵開け用の針金。それだけだ。

福沢は机の上にあった備え付けの万年筆を手にとった。そしてそのまま左側面に軽く当てた。右指で万年筆を握り、腰脇に当てた右手でキャップを握る。

一呼吸置いてから、進めた右足を強く踏み込んで、殺気と共に万年筆を抜き放った。

殺し屋は椅子に縛られたまま自ら横向きに跳んだ。福沢の斬撃から逃れるように。

福「案ずるな、ただの筆記具だ」

万年筆のキャップを戻し、机の上に置き直す。

殺し屋は床の上で蠢いている。

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たりたり(プロフ) - 光華さん» ご指摘ありがとうございます。速攻訂正しますのでもうしばらくお待ちください。更新は、なるべく早めに出来るように頑張りますのでこれからも宜しくお願いします。 (2020年7月14日 21時) (レス) id: 00b9e7564a (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 後半の方が苗字変換されてませんよ?更新頑張って下さい (2020年7月14日 21時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たりたり | 作成日時:2020年5月31日 12時

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