知り得ない、その呪い【呪術廻戦0】 (ページ29)

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傑「コレ、返しといてくれ」

そう言って夏油が投げたのは憂太の学生証

それに気づいた五条は目を見開いた

悟「小学校もお前の仕業だったのか！」

傑「まあね」

悟「呆れたやつだ」

まるで悪戯に成功した子供が種明かしをするかのように笑う夏油に、五条はため息をつく

どんな顔をしたらいいのかわからなくなりそうだった

言葉も、仕草も、悪い癖も全てがいちいち懐かしくて嫌になる

10年近く久しい、2人きりの会話。

それが呪いとなる前に五条は口を開いた

悟「、、、、何か、言い残すことはあるか。」

傑「、、誰がなんと言おうと、非術師(さるども)は嫌いだ。、、でも別に高専の連中まで憎かった訳じゃない。私の可愛い影華がいるんだ。これからも頼むよ。ただ＿＿」

たった一人の妹の姿を思い浮かべる

10年振りだった

自分によく似た綺麗な子に育っていた

しかしその成長に夏油は立ち会えなかった

それだけが、影華に対する後悔だった

置き去りにしたこと、妹が大好きだった両親を殺したこと

それらは後悔ではなかった

ただ、ただ、あの子を自分の手で育てられなかったこと

自分が危惧していたこの世界に足を踏み入れてしまったこと

それが嫌で嫌で仕方なかった

そんな汚い世界でこれからもあの子は生きていく

自分と同じ道を歩むのだろうか

傑「＿＿この世界では、私は心の底から笑えなかった」

自分が自分を生きてていいと認めるために、夏油は歪んだ理想を追いかけるしかなかった。

歪み、擦り減り続けてしまった男の、そんな最後の告白。

その呪いを受け取ることができたのは五条だけだった。

どこで間違えたのだろう

どこからなら、やり直せたのだろう

答えはもう、遠い、遠い青春の中。

だからいくら考えたってこの物語は終わってしまう

けれど一つ、確かなものがある。

何もかもが変わってしまっても、あの頃から変わらないものがある。

五条は腰を下ろし、座り込んだ夏油と目線を合わせる

「、、、、傑。」

「、、、、？」

夏油傑。それは呪術高専という組織には忌むべき名前。

四人の特級術師が一人、百を超える一般人を呪殺し、呪術高専を追放された、最悪の呪詛師。

そして、五条悟にとっては＿＿＿