【コンパス】おうじょさまときし【短編集】 (ページ6)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:7,061 hit

王女様と喧嘩【コンパス世界】ページ6

「アダムさんのバカ！！」

王女様の声が食堂に響く。
その場にいた全員の視線が王女様と俺に集まる。

王女様は目に涙を溜めて、俺を見つめてきた。
ああ、泣かせてしまった。そんなつもりはなかったのに。

何か言いたそうな顔をして、王女様は立ち去ってしまった。

「ちょ、ちょっと何があったんだ？」
「…私が悪いんです」

「あらあら、王女の守備騎士だというのに、王女を傷つけて、守備騎士失格じゃないかしら？」
「ちょっと、マリア…」

「そうかもしれません…私は、Aの守備騎士…いえ、彼氏失格です…」
「え、アダムどうしたんだよ…？」

普段なら、女団長と喧嘩になるところだが、今の俺にそんな気力はない。
女団長はギョッとした顔をして、焦ったように王女様の様子を見に行った。

「それでどうしたんだよ」
「…バトルの時女王陛下ばっかりだと」

「は？」
「バトルの時、女王陛下、女王陛下のことばかり言うなら、もう女王陛下と一緒にいればいいと…」

「あ、あー、あ、うん…」
「最低ですよね、俺」

「ま、まあ確かに女王率高いよな…うん」
「どうすればいいのでしょうか…」

「ただ嫉妬してるだけだろ？愛されてんだよ」
「Aが私のことを愛してるのは存じてます」

「腹立つな」

確かにバトルの中では女王陛下のことばかり言ってたかもしれない。
でも俺にとって女王陛下は、ただ忠誠を誓うだけであって、愛してるのは王女様だけだ。

それなのになぜ王女様はお怒りになられているのだろうか。

「とにかくよ、バトル中逆にAのことだけ言ってみたらどうだ？」
「はい、やってみます」

アタリさんに言われ、今日のバトルで試してみようと思った。
早速今日初めてのバトルでのことだ。

「早く終わらせよう。Aがお待ちだ」
「お、おい、アダム…Aいる、待ってねーから！」

アタリさんに声をかけられ後ろを向くと、機嫌の悪い表情をした王女様と目があった。
笑顔を返そうとしたら、すぐふんっと目をそらされてしまった。

「そんな泣きそうな顔すんなよアダム…」
「…はい、すみません」

「えーっと、A頑張ろうな」
「はい。…ワープ使います」

「お、おう…」

バトルが始まると同時にCポータルへと姿を移動する王女様。
このバトルでなんとかご機嫌を直していただかなければ。

Cポータルには、先にヴィオレッタさんがポータルを取っていた。
どうやらヴィオレッタさんのほうが早かったようだ。