〜無自覚〜 久我夢/甘 ページ2
残暑が残る9月のこと、何もしていなくても汗をかくようなムシムシとした暑さの中、ズラリと立ち並んだ出店屋台の端近くにあるかき氷屋の屋台に二人は立っていた。
本来は的屋というのはもっと末端組員の仕事なのだが、人手不足な上にこの猛暑だ。数人で回さなければ倒れてしまう。
「…やっと少し落ち着きましたね…」
久我「あぁ…。にしても暑ぃな…、水分ちゃんと摂ってるか?」
「…っはい、問題ないです。」
Aは思わず久我から目を逸らす。というのも今日はいつもとは違い、グレーのVネック半袖シャツに黒のスラックスという比較的ラフなスタイルをしている訳だが…暑いからといってシャツの裾をパタパタとするので、チラチラと腹筋が見えてしまっている。
(…見えてますが!?)
気にもとめていない様子の久我は適当に汗を拭う。するといつの間にやら来ていた女性客が声を掛けた
女性1「クリームいちごシロップ2つください」
久我「いらっしゃい…はい、千円です。お待ち下さい」ニコ
久我がニッコリと笑えば、客としてきた女性達はキャッキャとはしゃぐ。
(…兄貴さすが…カッコいいもんな…)
女性2「お兄さんカッコいいですねー。彼女いるんですか?」
女性1「もしよかったら、お仕事終わったら…」
(これが逆ナン…!…兄貴、どうするんだろう?)
氷を出しながら恐る恐る久我の方をチラと見る。
久我「いやぁ…悪いが…俺彼女いるんだ」
(…え)
その言葉を聞いたとき、頭を鈍器で殴られたような衝撃が襲った。持った氷を思わず落としそうになる。
(…久我の兄貴…彼女いたんだ…)
女性2「えぇー…残念…」
久我「わりぃな…はい、クリームいちごシロップ、お待たせしました。」
去っていく女性客達を見届けると、置いてあったペットボトルの水を一気に飲み干した。
ショックなとき、涙は意外とすぐに出てくるものではないらしい。呆然と多少手元を狂わせながら無くなったシロップの追加を出す。
舎弟1「お疲れさまです、交代に来ました…」
久我「おせーぞ!ったく…てめーら、横でやってるカタギの店に迷惑かけんなよ」
舎弟2「はい」
いそいそと手荷物を後ろに置きに行く舎弟達を尻目に久我はAへと歩み寄った。
久我「ふぅ…。な、なぁA」
「…。」
少し緊張気味に声を掛けるが、ぼんやりとしたAはそれに気が付いていない。
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ひなえ(プロフ) - ゆうさん» 読んで頂きありがとうございます! (2022年11月1日 21時) (レス) id: a16a1e4961 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 相良さんのプロポーズ最高です!!!!!!! (2022年11月1日 21時) (レス) @page39 id: 945705f77e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひなえ | 作成日時:2022年7月28日 16時