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自分の彼女なのだと、公言できたらこんなくだらない事でイライラもしなくなる…かもしれない。
誰かに自分を好きになってほしい、なんて初めての気持ちだった。
「あの、兄貴、何を買いたかったんです?」
Aに一条は困り果てる。出鱈目だったのでどこに行くか等決めていなかった。
一条(…本当、らしくねぇな)
一条「あぁ、新しいピアスが見たかったんだよ。たまには人の意見も聞いてみたくてな」
「そうなんですね!見に行きましょう」
一条(信じた…!)
そうして向かったメンズアクセサリーショップに入り、30分ほど掛けて見て回ったあと、Aが最初にじっと見ていたピアスを指した。
「兄貴、これどうです?」
それは赤くて大きめなピアスで、耳朶を覆いそうなものだった。だが言った直後、Aは渋い顔をした。
「でも…」
一条「どうしたんだ?」
「今つけてる金のピアスもカッコいいなーって…だからとっちゃうのも勿体ない気がして…」
一瞬驚いて固まったが、すぐに少し面白くなり、笑ってしまう。
一条「大丈夫だ、これもまた交互でつけてくる。」
「良かったです…なんか、そのピアスしてると一条の兄貴って感じがして…」
と笑うA。どういうことだよ、と言いつつも選んだアクセサリーを褒められるのはやはり嬉しいものだった。
「あっ…せっかく新しいの買いに来たのにすみません」
一条「いや…。ありがとう、この赤いのと交互につけてくるようにするよ」
そう言って会計を済ませ、Aの選んでくれたピアスを入れた紙袋を大事に握り、コーヒーを買ったあと、入院している源十郎の元へと向かうのだった。
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作者名:ひなえ | 作成日時:2022年7月11日 8時