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翌日、卒業式が終わり、帰宅して気構えを済ませたAを自宅に迎えに行き、少し離れた久遠町にある少し小洒落たレストランに入り、メニュー表を見て目を輝かせるAを思わず眺める。
百面相するその顔は見ていて飽きないどころか、なんだか和んでしまい、つい頬が緩む。それに気が付いたAがふと一条の顔を見つめる。
「兄貴?どうかしました?」
一条「いや、面白いなぁと」
「え?私なんかしちゃいました?」
一条「いーや、なんも」
思わず笑う一条にAは不思議そうに首を傾げる。
そんな何気ない動作ですら可愛らしい。
運ばれてきた食事を食べ終えると、Aは払うと言ったが後輩に出させるわけにもいかないので断り、会計に向かうと、新入りらしき店員に謎の割引をされていることに気が付いた。
間違っていたのなら困るだろうと口を開く
一条「これって…」
店員「あっ!言い忘れておりました。本日カップル割ありますので、少しお安くなっております。」
一条/A「!?」
一条(カップル!?)
何より厄介なのは、店員は純粋に仕事として接客しているだけで、冷やかしや疑いなくカップルだと思っている様子の顔だった。
男女での食事なら事実付き合ってなくともそうなることはよくあることだ。だが、面と向かって付き合ってないのにカップルと言われると、少しばかり気恥ずかしい。
一条「そうですか…。」
一条(否定したら変な客だよな。まぁ俺は嫌ってわけじゃねぇし…いいか?)
「ご、ごちそうさまでした…」
少し恥ずかしいながら会計を済ませ、それきり何も話さないAを不思議に思い、チラと見ると白い肌を耳まで真っ赤に染めていたことに気が付いた。初めて見るその顔にこちらまで少し顔が熱くなる。
一条「そういや、組に入って最初はジャージ着てたほうが何かと便利だって言ったろ?用意あるのか?」
苦し紛れだが空気を変えようと無理矢理話題を作った。
「いえ、まだ…」
一条「良かったら見に行くか?」
「は、はい」
Aの返事を聞くなり一条は近くのショッピングモールへと車を走らせた。
(カップルって…!どうしよう…なんか兄貴の顔見れない…)
Aは人に言われて初めて、一条を少し意識し始めていた。
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作者名:ひなえ | 作成日時:2022年7月11日 8時