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緊張気味に入った一条の自宅は本当にものは必要最低限、黒が基になったシックな家で、多忙故にあまり帰れないのか、それとも性格からなのか生活感はあまり感じられない。
だが家から香る珈琲とタバコ、そして仄かにだが柔軟剤の香りが鼻をかすめる。それらは全て嗅ぎ慣れた一条の匂いそのものだった。
一条「そっちに座ってて。」
そう言って一条が指したソファーに腰掛ける。正直なところ源十郎が倒れていた家に一人で居るのは少しばかり辛かったので、違う環境にいると心がスッと楽になった。
そしてケトルで水を沸かして白湯を淹れて戻ってきた一条はフッと笑ってAの前に白湯を置いた。
「…あ、ありがとうございます…」
一条「とまったな、涙」
「…あ…」
言われて初めて悲しくて仕方がない筈なのに涙が止まっている事に気が付いた。
(…分かっててくれてたんだ…)
「あの…」
一条「謝罪はもう聞き飽きたぞ。」
一条は笑って正面に腰掛けると、自分は珈琲をゆっくりと飲み始めた。
「どうして…」
一条「?」
「どうして…そこまでしてくださるんですか…?」
この質問に一条は少し面食らったような顔をした。が、少し考えたあと
一条「源十郎殿には俺も世話になってるし、正式な構成員でなくとも妹みたいに思ってるからだよ。」
「でも…」
一条「心配すんな。見返りなんて求めてないし、別に取って食ったりしねぇよ」
そう言って笑う一条につられてAはやっと少しだけ笑うことができた。
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ひなえ(プロフ) - 黄昏さん» 読んでいただき、ありがとうございます!亀更新ですがこれからもよろしくお願いします。 (2022年7月6日 14時) (レス) id: a16a1e4961 (このIDを非表示/違反報告)
黄昏 - 初めまして、「私、気が付いたら極道でした」を読ませて頂きました。とても、面白くて続編を楽しみにお待ちしております。 (2022年7月6日 3時) (レス) @page26 id: 7ec4680236 (このIDを非表示/違反報告)
みたぞの(プロフ) - オリ/フラ立ってますよ!!続編作ってもフラグのチェックが入ってしまいます!!確認して外して下さいね!! (2022年6月29日 22時) (レス) id: 5dcad8042f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひなえ | 作成日時:2022年6月29日 18時