私、気が付いたら極道でした （ヒューマンバグ大学）

Episode５　受け継がれる意思 ページ18

一条side

「いっそ孫を嫁にもらってくれんか」

そう言われて心底驚いた。何故ならまだAは中学生だ。結婚相手なんて気にするような年でもない。
ましてや９歳も離れている自分になぜ？というのが正直な感想だ。あと３つも離れていれば一回り離れている事になる。
どこか寂し気な源十郎さんの様子を見たら本心で言っているのはすぐにわかった。

正直に言うと、彼女はひたむきで素直で顔も込みでとても可愛らしいと思う。アリかナシで言えば迷うことなくアリだが…何せまだ中学生。食いつけばただの変態だ。
何より、彼女も年頃の女の子だ。
聞かないだけで好きな子や、彼氏の一人ぐらいいたっておかしくはない。男共もほっとかない可能性が高い。
今はまだ兄貴分として彼女の幸せと成長を近くで見守りたい。だから、あくまで本人達の意思優先であることに安心した。

日頃から熱心にトレーニングしているのだろう、血が滲むほど模造刀や竹刀を握りしめている。力みすぎている気もするが、それだけ一生懸命なのだと微笑ましい。
そっと手に触れると年頃の子とは思えないほど皮膚が分厚くなってきている手が、ほんの数年前に見ていた手より随分大きくなったのだと認識した。

一条(この頑張り様には頭が下がるな…)
一条「大きくなったなぁ…」

稽古の後、事務所に向かうため嬉しいような寂しいような気持ちを抱え込んで、車に乗り込んだ。

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