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一条(そんなにあのストラップ大事にしてたのか…本当そういうところなんだよなあ…)
一条は出会ってすぐから、今もAは、自分のあげたささやかなプレゼントで大袈裟なくらい喜んで、それをずっと大事にしている事、そんなところにどうしようもない愛おしさを感じていた。
壊れてしまってもまた直して使おうとしたり、ボロくなったからとこちらから強制的に買い替えなければ
「いいですよそんな!」
と、言ってくるので我慢しているのかと心配になる。
大体は年上と付き合えば、求めてくるものは包容力や経済力、買ってもらうなら高いものを求めてくることがザラだが彼女はそれが一度もない。
無理していないかと聞けば、いつも笑顔で
「康明さんから貰えたって事が嬉しいんです!」
それがAの口癖だ。
そんなことを思い返しながら、Aの自宅に着いて駐車し終えると、車から降りて一条は微笑みながらAの頭をクシャッと撫でた。
一条「…またいつか行って同じ物を買おう。な?」
「でも…」
一条「失くさなくても形あるものはいつかは壊れる。失くした事は怒ってないから、気にすんな。」
「…はいっ」
Aは瞳を潤ませ、一条に抱き着いた。
一条はAを片手で受け止めて背中を擦りながら、空いた左手の人差し指でAの額をノックするように、コツンとさせると
一条「それよりも…今後は何かあったら真っ先に俺に頼って来い。」
「でも…ご迷惑なんじゃ…」
一条「全然だ むしろ少しは 頼れよな…人にすぐ頼らず頑張るのは良いことだけどな。Aは頼らなさすぎだ。」
「はい、すみません…」
一条「遅くなっちまったな、先に風呂入ってこいよ」
「そんな、お先に康明さん(一条)「困ったな 一緒がいいか 風呂狭い」
「なっ…何を言ってるんですか!」
一条「冗談だよ」
顔を赤くしたAを見て一条は笑う。楽しそうな一条とは裏腹に、からかわれてばかりなAは悔しそうに少しだけむくれて見せる。
一条(A少しは元気出たみたいだな。良かった)
そんな理由もあって笑っている等とは露知らず。
和やかな雰囲気の中、スペアキーで鍵を開け、家に入ってから寝支度を整え、化粧も完全に落としたAを一条はジッと見つめる。
化粧をするよりずっと昔から知っているとはいえ、あまりジッと見られるのも恥ずかしい。
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作者名:ひなえ | 作成日時:2022年10月31日 0時