ヒューマンバグ大学短編集４！ (ページ35)

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〜思い出〜　相良夢/甘　ページ35

夏の暑さも過ぎ去り、冷たい秋風が吹き始めた頃、少しの肌寒さのせいか夜中にふと目を覚ました相良は、隣でスヤスヤと眠るAに何気なく目をやる。

相良(さみぃな…目が覚めちまった)

寒さですっかり眠気の覚めてしまった相良は、Aの髪に触れたり、頬をつついたり軽く摘んだりして遊ぶ。すると少し寝苦しそうにAはむにゃむにゃ言うと、もぞもぞと動き、夢でも見ているのか少し楽しそうに笑う。

相良「はっ…間抜けなツラしやがって」

起こさないよう小さな声で明らかに馬鹿にした言葉を発するが、優しい顔をして愛おしそうにAを見やり、ずり落ちている布団を再度Aに掛け直す。

相良「ったく、風邪ひくだろうが」

視界の端に映った時計の下に小さく映る日付を見て、相良はぼんやりと昔前の事を思い出した。

相良(風邪…？あー確かこんぐらいの時期だったか？)

それは８年前、この時期は昼間は晴れていれば日差しも強く暖かいが、それが夜になると一変して寒くなる。
ただでさえ冷たい風が体温を攫っていくというのに、その上雨となれば更に体温を奪う。そんな日のことだった

(うわー…酷く降ってきた…これやむかなぁ…)(A当時２０歳)

それは初めて一人でのカチコミを任され、無事終えて帰ってきたAが事務所への帰り道、大雨に降られて雨宿りしていた時だった。

(天気予報見てなかったし…あー…最悪。)

その数日前からAはちょうどシノギが繁忙期になり、天気を見て行動出来ていなかった。

相良「何してんだお前。」(相良当時２２歳)

「あ、相良。」

そこにちょうど自宅へ帰る途中の相良が通り掛かった。

「雨降るって知らなくてさー…傘持ってきてなかったんだよね」

相良「天気予報ぐらいニュースついでに見とけよ」

「忙しくて見てられなかったのよ」

相良「なーにが忙しいだよ、お前効率悪いんじゃねえの」

当時から相良はAに惚れていたが、プライドが邪魔をして気持ちを表現出来ず小馬鹿にしたり、冷たくしたりでしか関わることが出来ずにいた。

そして、本当はそんな自分に嫌悪している節もあった。

しかし、どんなに嫌なことを言って怒らせても、Aは接し方を変えたり、陰口を言わず真っ直ぐにぶつかってきた。