ヒューマンバグ大学短編集４！ (ページ31)

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続きですページ31

「あの、小林の兄貴？どういうご用件で…？」

小林「…」

「…別に逃げたりしないのでそろそろ降ろして頂けませんか？」

小林「お前の歩行ペースに合わせるの疲れるから運んでんだよ、文句言うなぁ」

「でしたら私が小走りしますから…」

小林「この方が早いんだよ、黙ってないとぶん投げるぞぉ」

そう言って抱えたAを見ようともせず、暫く歩いた先で案外優しく降ろされた。

(本当になんなんでしょう？この方は…)

小林の雰囲気は特段怒っている訳ではなく、さも平然といった具合な上に、周辺に飲み屋があるわけでもない。本当にどうして連れ出されたのか分からなかった。

小林「よぉし着いた」

「あ…」

そして視界に飛込んできたのは、少し遠くに見える大きな橋が美しい光でライトアップされている景色だった。Aはそっと柵に寄り掛かり、その景色に魅入る。
数日前、速水達と話していたことをふと思い出す。

速水「北岡の兄貴、Aの姉貴、あの遺体を冷凍する所がある近くに、でっかい橋あるじゃないですか」

「橋…？そう言えばありましたね…」

速水「近くで花火やるとき以外はライトアップされてるらしいの知ってました？」

北岡「へえ、あっち最近行ってねえから知らなかったな。な、なぁA、今度(小林)何話してんだお前らぁ、今からチャカの特訓だぁ！」

小林が途中で割って入った為に中断されてしまった為に忘れていたが、話に出てきたライトアップの橋はこれの事だったのかと気が付いた。

「ここって…」

小林「前話してたから来てみたかったんだよな。」

小林はそう言ってAのすぐ横に寄り掛かると、突然押し付けるようにAの頭に手を置くとワシャワシャと髪を荒らした。

「わっ…！ちょっ…！」

小林「…無理はすんなよぉ、疲れたろ。」

「…え…」

小林「お前毎度ヤクが絡むたびキレてんじゃん、しかも泣きそうなほど。」

「！？」

誤算だった。怒っている事だけならまだしも、まさかそこまで感情を読まれているとは思わなかった。

小林「綺麗なもんでも見てりゃ気持ちも落ち着くだろ」

「…どうしてそこまで…」

小林「何言ってんだ、下を励ますのも兄貴分の仕事だぁ」

「…そうですか。」
(仕事、か…)

先輩としてやっているだけと言われ、何故か少し胸が痛む。
ほんの少しだけでも、特別だからだったらいいななんて淡い期待を持ったのが恥ずかしくなる。