ヒューマンバグ大学短編集４！ (ページ30)

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〜女神は悪魔と契りを交わす〜　（ゲスト）小林夢/甘ページ30

※Ｂが天羽組の設定です

朱雀町にある雑居ビルの地下で、ドサッ！と音を立ててAの毒をくらったジャンキーの半グレがその場に倒れ込む。

この半グレ達は一度ならず二度までも空龍街で薬を売った事で粛清対象となった者達だった。

「クソ野郎…！」

女神のようとさえ言われるいつもの穏やかな笑顔を歪め、毒々しく吐き捨てたそんな小さな呟きは男の倒れる音で掻き消され、誰の耳にも届くことなく暗闇へと溶けていく。

幼い頃にジャンキーに家族を奪われたAは、薬を使用して人を殺めて薬のせいだと言う人間も、そんなものをばら撒く人間にもどうしようもない嫌悪感があった。
故に薬の売人と聞くと表にこそ出さないものの、湧き上がる憎悪から薬絡みのカチコミには必ず参加していた。

粛清した後も止まぬ怒りと、忘れられぬ惨劇からくる悲しみを抑えつけるように、深呼吸をして穏やかな表情を取り繕い直した頃、奥から小峠と小林が出てきた。

小峠「A、怪我はねえな？」

「はい、問題ありません。兄貴もご無事で」

小林「おー…。」

遺体処理を始めるとふと、小林にジッと長らく見つめられている事に気が付いた。いつもならここで

小林「俺遺体車に積んだら帰るわあ。」

とでも言い始める小林なのだが、そう言い出さないことも珍しく黙って遺体を積んでいる。その上冷凍庫へと運び出すのも黙々とこなした。

小峠(小林の兄貴が黙々と処理を…！？)

(今日は雨か槍でもふるのかしら…)

若干違う意味で恐怖さえ覚えている小峠と、空を見上げて安全確認を行うAに小林が知ってか知らずか声を掛ける。

小林「華太ぉ、俺とAちょっと抜けるから終了の報告しとけ。」

(…！？)

小峠「えっ！？」

小林「ああ？」

小峠「しょ、承知しました」

(私の意志は無視ですか…？)←という目

小峠(逆らったら俺もお前も内臓がスムージーになる、諦めろ)←という目

Aは穏やかな表情を崩さぬように、小峠と目配せで意思の疎通を図っていると

小林「何してんだぁ早くしろぉ」

そう言うと小林はAの首根っこをひょいと片手で軽々と持ち上げた。

「ちょっ…！？」

小林「華太ぉ、後頼むわあ」

小峠「はい」

そしてAを小脇に抱えるとスタスタと歩き出し、ほとんど真っ暗で何も見えない海沿いの道をしばらく歩く。
Aの位置からは何も見えないが、夜のじっとりした潮風が髪を揺らす。