62話 ページ18
Aが観客席に戻ると、Ａ組の皆が一斉に声をかける。
「Aちゃん凄かったわ。」
「上鳴の最大出力をあんな一瞬で弾いちまうなんて流石だな！！」
「次の試合、全力で行かせて貰う。」
『ありがとう、嬉しいよ。常闇君もお手柔らかに。』
そう言って微笑むと、前の席で水分補給をしながら観戦している勝己の隣に座った。
その行動に思わず勝己が目を見開いて固まる。
「…お前の席ここじゃねぇだろ。」
突如轟によって出現した競技場をも超える大きな氷によって誰もAの行動を
気にも留めなかった。
Aは少し悲しそうな瞳に大きな氷を映した後、勝己に困ったような笑みを送る。
『勝己のそば、安心するんだよね。』
「！！、そうかよ。」
不意打ちだ、そう思った。
この時勝己はAが次の試合に緊張をしているのかと思っていたが、
数時間後それは自分の勘違いだったことに気がつく。
出久も何とか心操との勝負に勝ち、１回戦は全て終わった。
赤黒く腫れた指を押さえて入場口の階段を下りると、そこにはAの姿があった。
「あれ、A、どうしたの？」
太陽によって作られた入り口の黒い影がAの顔を暗く照らす。
『出久の傷、治そうと思ってさ。』
「え、でもまだ試合が残ってるから体力は温存しておいた方がいいんじゃないかな。」
『…、うん、何ていうかむしろ私は体力を使いたいんだよね。』
そういうと半ば強引に出久の指に手を当て、傷を治す。
翳していた手を退けると、出久は真剣な目を向けてくる。
「…体力使いたいって、どういうこと？」
Aは少し困ったような顔をしながら視線を地面に落とす。
『最近どんどん力が強くなってきたからさ、余力があると使い勝手が難しくてね。』
彼女はそう笑って言ったが、出久には今にも泣き出しそうな顔に見えて、思わず息が詰まった。
自分が伝えたい言葉を口から出そうとした時、
のどがヒュっと音を立て、悪寒が全身を襲った。
「(な、なんだ！！？)」
背中を変な汗が伝う。後ろから来る…！！
振り向こうと思っても体が動かない。
Aの方を向くと険しい顔をして正面の廊下を見つめている。
そして足音が２人の隣を通った時
「ク゛リ゛エ゛イ゛タ゛ーと゛ア゛ナ゛リ゛シ゛ス゛の゛む゛す゛め゛…ひひっ」
確かに、そう言った。
Aは目を見開き数秒固まった。
そしてはっとして振り返った時にはもうそこに人の姿はなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 415人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
それいゆ(プロフ) - 風速100�辰気�» 楽しんでいただけて幸いです！これからも少しずつですが更新していくので良かったら見ていってください＾＾ (2017年9月30日 18時) (
レス) id: 6ca5e17515 (このIDを非表示/違反報告)
それいゆ(プロフ) - 海苔巻さん» ありがとうございます＾＾とても嬉しいです＾＾！頑張ります！ (2017年9月30日 18時) (レス) id: 6ca5e17515 (このIDを非表示/違反報告)
風速100��(プロフ) - オチが誰になるのか考えながら楽しく読ませていただいてます！これからも更新頑張って下さい(^ ^) (2017年9月9日 20時) (レス) id: 345fc05a24 (このIDを非表示/違反報告)
海苔巻(プロフ) - このお話本当に大好きです！更新頑張ってください！! (2017年9月4日 21時) (レス) id: f9e32566f1 (このIDを非表示/違反報告)
それいゆ(プロフ) - 神楽と来夏さん» ありがとうございます＾＾そう言って頂けて嬉しいです！ (2017年8月26日 19時) (レス) id: 6ca5e17515 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：MAKEOVER | 作成日時：2017年4月9日 15時
