44 ページ44
「Aちゃん、枝豆ー」
「はい！」
「姫〜」
「はいはい、ビールお待たせしました！」
店の手伝いを再開させた私は、今まで以上に忙しく働いている。
やらなければいけないことで頭が埋め尽くされる感覚は、いい。
何も考えなくて済む。
ヨリさんともお姉ちゃんとも、会うことはおろか、話すこともない。
事務所は否定しているけど、本当のことなんて、本人達しか分からない。
ドラマで恋人役だったということもあり、今やすっかり二人とも渦中の人だ。
お母さんには、お姉ちゃんからの連絡があったらしい。内容は聞いていない。怖くて聞けなかった。
「今日もごちそうさま！」
最後のお客さんが帰った後、無心で床掃除をして、へとへとになってお風呂を済ませた。
ベッドにうつ伏せになると、頭に浮かぶのは二人のこと。
考えたくなくても、頭があの日の後ろ姿を映し出してしまう。
今なら分かる。
あの朝聞こえた機械音はカメラの音で、二人はその音に驚いて辺りを見回していたのだと。
そして、目線の先には私がいた。
声をかけられた瞬間、私は走って逃げた...
二人はきっと私が写真を撮ってマスコミに渡したと思っただろう。
多分お姉ちゃんもヨリさんも知ってる、私がヨリさんに告白を拒否されて、お姉ちゃんを羨ましく思っていることくらい。
それをする動機がたっぷりあるんだ。
やってないよ、そんなこと。
そう主張したい。
でも電話をする勇気がない。
わざわざ自分からそう言って、一層嘘っぽく思われたらどうしよう。
電話、だ。
「もしもし？」
「...A？」
ドクン、心臓が鈍い動きになる。
嫌だな、あんたのせいでって言われたらやだな。
言わなきゃ、私じゃないって。
私があなた達を苦しめたんじゃないって...
「お姉ちゃん、」
「ごめんね。私、Aに酷いことした」
「...え？」
「Aがチャニョル君のファンって知ってて、彼の家に泊まった」
やっぱり、泊まったんだ...
ぎゅって胸が苦しくなる。
そんなの聞きたくない...
「でも、彼とは何にもないから。信じて」
「じゃあなんで家に帰ってこないで、行ったの？」
自分の声が震えているのが分かる。
「...私は、Aのお姉ちゃんだから。酔った姿を見せたくなかった」
その言葉に、事の重大さを知る。
『酔ったお姉ちゃんはみっともないから、嫌い』
全ての原因は、私のあの言葉...？
そのせいで、お姉ちゃんはヨリさんの家に泊まって、それで...
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 875人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無し87674号(プロフ) - 1時間くらいぶっ通しでずっと、甘い時間に浸ってました。かき氷食べるたびまた読みたくなりそうだなぁ(o^^o)←私も去年3週間イギリスにホームスティしてきました！フランス観光いいなー私も行ってみたかったです笑ようこさんの他のお話しも読んでみます！！ (2015年5月30日 22時) (
レス) id: 9440c7c8f3 (このIDを非表示/違反報告)
さっこ(・∀・)(プロフ) - ようこさんのお話大好きです（笑）もうキュンキュンがとまりませんでした。。。（笑）ヨリさん///最高です。ステキなお話ありがとうございました！ (2015年2月1日 20時) (レス) id: 5068b8929b (このIDを非表示/違反報告)
みた - もうようこさんの作品ぶっ続けて読みまくってしまいました！！本当お話大好きで大ファンになってしまいました！！！ヨルさん！！！本当素敵ですねぇ！！！番外編もっともっとみたいです！メンバーからも好かれちゃってヨル嫉妬とかもうちょーみたいです！応援してます！ (2014年11月16日 2時) (レス) id: 82f87285fd (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - chenchenさん» わあ、5時間もかけて読んでくださったんですか！？大変だ...キュンキュンしていただけて嬉しいです(*'ω'*)ヨリさんは一番少女漫画っぽい感じだったと思います！全部読んでくださってありがとうございました！！ (2014年9月7日 10時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
chenchen(プロフ) - 最高です。ようこさんの書く作品最高です!!12時に読み始めてすべての作品よんじゃいました（笑）もうこんな時間ですよ(-^〇^-)もうキュンキュンです。ありがとうごさいます！！ (2014年9月2日 5時) (レス) id: b9dfe4713f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ようこ
| 作成日時：2014年7月10日 16時
