36 チャニョルside ページ36
「...好き、」
まさか、と思った。
まさか、この子が告白できるはずがないって。
珍しく一人でお酒を煽る。
小さな電気を一つしかつけず、薄暗い自分の部屋で、コンビニで買ってきたチューハイの缶を飲み干した。
プシュ
もう一本開ける。
鮮明に思い出せる。
Aちゃんの赤く染まった頬、噛み締められた薄い唇、伏せられた長いまつ毛。
「好き、か...」
彼女は一体どんな心境でその言葉を言ったのだろうか。
...僕はすごく酷い人間なのかもしれない。
本当は、気付いていた。
パッと頬に朱色が走る瞬間を、何度も見ていたから、薄々彼女の恋心に察しはついていた。
『自分とは比べものにならないくらい綺麗なお姉ちゃんがいるんです』
姉のユラヌナを連れてお店に行った時、ヌナの「兄弟はいるの？」という問いに、そう答えていた彼女。
その自信なさげな表情は、僕の前でも時々するものだった。
このチューハイ、グレープフルーツ味だ。
嗅いだ記憶のある香りが、鼻に抜けていく。
きっと、この子は僕のことが好きでも、その想いを伝える勇気と自信はないだろう。
そう高を括って、僕はそれに気付かないフリをしていた。
Aちゃんと話している時間は、この上なく心地良くて、胸が安らいだ。
愛とか恋とかが絡むと、男女関係は面倒になる。
僕は、どうにか想いを隠そうとするAちゃんに甘えて、何にも気付いていないことにしたのだ。
『迷惑かけてごめんなさい...』
Aちゃんの頬を伝った透明の涙。
くしゃ、と顔を歪めてどうにか笑おうとする姿に胸が痛んだ。
泣かせるつもりはなかった。
そんな言葉を言わせるつもりもなかった。
僕なんかよりいい男がいっぱいいるだろ、と励ましたかった。
彼女は、僕が芸能人で物珍しかったから興味を持っているのだと思っていた。
『好き、』
体の内側から、溢れ出したように発せられたその言葉。
僕は、本当に酷いことをした。
あんなにも心のこもった彼女の言葉が、冗談なわけない。
僕はそれを軽く扱った。
ずるい男だと、自分でも思う。
「...」
これから、Aちゃんと今まで通りに話せる日はくるのだろうか？
僕はあの幸福な時間を失ってしまったのだろうか？
「...っ、」
熱い液体が目から零れ出す。
どうして、泣いているんだろう。
彼女の想いに応えようとしなかったのは僕だ。
なのに、彼女の笑顔を再び見られないと思うと、
あまりにも悲しくて、涙が止まらないんだ。
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名無し87674号(プロフ) - 1時間くらいぶっ通しでずっと、甘い時間に浸ってました。かき氷食べるたびまた読みたくなりそうだなぁ(o^^o)←私も去年3週間イギリスにホームスティしてきました！フランス観光いいなー私も行ってみたかったです笑ようこさんの他のお話しも読んでみます！！ (2015年5月30日 22時) (
レス) id: 9440c7c8f3 (このIDを非表示/違反報告)
さっこ(・∀・)(プロフ) - ようこさんのお話大好きです（笑）もうキュンキュンがとまりませんでした。。。（笑）ヨリさん///最高です。ステキなお話ありがとうございました！ (2015年2月1日 20時) (レス) id: 5068b8929b (このIDを非表示/違反報告)
みた - もうようこさんの作品ぶっ続けて読みまくってしまいました！！本当お話大好きで大ファンになってしまいました！！！ヨルさん！！！本当素敵ですねぇ！！！番外編もっともっとみたいです！メンバーからも好かれちゃってヨル嫉妬とかもうちょーみたいです！応援してます！ (2014年11月16日 2時) (レス) id: 82f87285fd (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - chenchenさん» わあ、5時間もかけて読んでくださったんですか！？大変だ...キュンキュンしていただけて嬉しいです(*'ω'*)ヨリさんは一番少女漫画っぽい感じだったと思います！全部読んでくださってありがとうございました！！ (2014年9月7日 10時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
chenchen(プロフ) - 最高です。ようこさんの書く作品最高です!!12時に読み始めてすべての作品よんじゃいました（笑）もうこんな時間ですよ(-^〇^-)もうキュンキュンです。ありがとうごさいます！！ (2014年9月2日 5時) (レス) id: b9dfe4713f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ようこ
| 作成日時：2014年7月10日 16時
