ツツジの赤 ページ8
平日の10時くらいはお散歩にちょうどいいと思う。仕事してる人が殆どだから、周りを取り巻く人もいない。
普段は自転車で事務所まで通勤しているけど、Aを乗せるカゴが無いので、時間に余裕を見ながら歩く。
「ポカポカして気持ちいいね」
そう話しかけると、大人しくしていた腕の中のAが、こてん、と僕の胸に頭を預けた。柔らかくて細い髪の毛が、僕の鎖骨をくすぐる。
A「うーはん、」
お!喋った!
「ウーファン?クリスのこと?」
A「んーん!うーはん!!」
「うーはん?」
A「ちあう!ゆーはん!」
「お夕飯?まだ朝だよ?Aちゃんもうお腹すいたの?食いしん坊だなあ」
それにしても随分大きくなったなあ。片手で抱っこも大変になってしまったので、僕は今日はリュックにして、両手でAを抱えていた。
指を咥えて、Aは恨めしそうに僕を見ていた。え、なに、怒ってるの?
A「るう、はん」
「あ、え?ルハンって言ったの!?Aちゃん僕の名前知ってるの?」
A「ふんっ」
拗ねちゃった。
「嬉しいなあ!」
背中をぽんぽんと叩く。よいしょ、と抱きしめ直して、春の日差しの照らす、暖かな道を歩いた。
Aの温もりを感じながら、僕は喜びを隠すことが出来なかった。思わず上がる頬。
A。
君はどうしてパパの元に来てくれたのかな?
君のママは誰なんだろう。
ママとパパがまだ会ってないから、会わせに来てくれたのかな。
こんなに可愛い娘が産まれるなら、早く君のママに会いたいな。
もしかしたら、もう出会っているのに、互いに気付いていないのかな?
A「きれいね」
指差す方向を見ると、車道と歩道の間に茂るツツジが真っ赤な花を満面に咲かせていた。
「本当だ。綺麗だね」
まだ声が高くて舌足らずなAが発するには、なんだかとても大人っぽい言葉のように思われる。
この子には既に美の感覚が備わっているんだ。
A「きれいねえ」
惚れ惚れとツツジを見るA。
その横顔は、なんだか子供のそれではない気がした。
A「んー!」
じたじたと歩きたそうにするので、道に降ろしてやった。
腰を曲げて手を繋ぎながら一歩一歩進む。
屈んで歩く方が辛いかも。重いけど抱っこした方が腰に負担がかからないかな。
小さな手を包みながら、僕は未来の奥さんに想いを馳せた。
どうして、Aちゃんがこっちに来たのか。
いつか分かる時が来るのかな。
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かのか(プロフ) - おもしろい!スゴく良かった!2章読んできまーす! (2015年7月6日 8時) (レス) id: 171b30f749 (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - べっちゃんさん» べっちゃんさん、コメントありがとうございます!短編の時から、とは彼に恋しても無駄時代からですね(;゜0゜)大変です!そんな前から読んでくださっていたなんて、感謝感激雨あられです(≧∇≦)ありがとうございます!! (2014年7月18日 20時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - ヒロンさん» こんばんは!お返事遅くなってしまってごめんなさい(;_;)2章の方、ゆっくりですが更新しておりますので、よかったら訪れて下さいね( *`ω´) (2014年7月18日 20時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
べっちゃん(プロフ) - 第一章 完結おめでとうございます!短編のときから読ませて貰ってました!これからもファイティン! (2014年7月13日 12時) (レス) id: 1623f1ded7 (このIDを非表示/違反報告)
ヒロン(プロフ) - ありがとうございます☆すっごく楽しみにしていますp(^-^)q更新頑張って下さいね♪ (2014年7月13日 9時) (レス) id: 0719d3023f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ようこ | 作成日時:2014年5月1日 17時