玄関にて ページ38
A「いってらっしゃい」
玄関先、黒いお気に入りの靴を履く僕の頭上から、声が降ってきた。
「ん、」
いつも僕が見送る側だから、なんだかくすぐったい感じ。
「今日は僕練習で帰って来れないから」
A「そう...寂しくなるね」
丁寧に靴紐を結ぶ僕の横にしゃがんだ君と目が合う。膝の上に顔を乗っけて、いたずらっこのような目で見てくる。
「嘘だね。最近ハマってるドラマの録画溜まったやつ、思う存分見るんでしょ」
いつも僕が見たいチャンネルに変えると、不機嫌になるもんね。
A「そりゃ見るけど。ほんとだよ。オッパいないと寂しいよ」
「どーだか。僕のこと忘れちゃうんじゃない?」
おどけてそう言う僕に、クスクス笑うA。
「Aが忘れないように、おまじないかけてあげる」
目を瞑って後ろを向くように合図する。
肩に背中にかかる長い髪を掻き上げると、白いうなじが露わになった。
花畑のような瑞々しい香りがする。シャンプーの匂い。
鞄から、白いきちんとした、それだけで存在感のあるような細長い箱を取り出して、開ける。
碧い石の、華奢なネックレス。
Aの首の後ろで留め金を留める時、首筋に、指先がちょんと触れた。
それだけで電流が走ったようにビクッとした自分の体。なに、意識してるんだよ。
Aの肌は、なんだか冷たかった。
「目、開けて」
A「わ!綺麗!オッパこれどうしたの!?」
「似合うかなって思って。無くさないでね」
キラキラ目を輝かせるAを見て、笑みが零れる。
A「もらっていいの?」
「うん」
君のことを考えて、君のために選んだんだから。
A「ありがとう...大事にする!毎日つける!校則で禁止されてるけど、制服の下にしていくね。
わー、見て!光に当てると違う色に見える」
わー、って何度も感嘆の声をあげるAを傍目にトントンと爪先を地面に打って、出発の支度を整えた。
「喜んでくれてよかった。じゃ、僕行くね」
A「うん、頑張ってね。あと、ネックレスありがとう」
「これで寂しくないでしょ?」
じゃーね、と軽く手を振って家を出る。
Aのあんなに喜ぶ顔を見られるなら、プレゼントもたまにはいいかもしれない。
ライトを点けた自転車で夜道を走る。
EXOのメンバーと泊まるの、久し振りだなあ、なんて考えたり。
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かのか(プロフ) - おもしろい!スゴく良かった!2章読んできまーす! (2015年7月6日 8時) (レス) id: 171b30f749 (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - べっちゃんさん» べっちゃんさん、コメントありがとうございます!短編の時から、とは彼に恋しても無駄時代からですね(;゜0゜)大変です!そんな前から読んでくださっていたなんて、感謝感激雨あられです(≧∇≦)ありがとうございます!! (2014年7月18日 20時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - ヒロンさん» こんばんは!お返事遅くなってしまってごめんなさい(;_;)2章の方、ゆっくりですが更新しておりますので、よかったら訪れて下さいね( *`ω´) (2014年7月18日 20時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
べっちゃん(プロフ) - 第一章 完結おめでとうございます!短編のときから読ませて貰ってました!これからもファイティン! (2014年7月13日 12時) (レス) id: 1623f1ded7 (このIDを非表示/違反報告)
ヒロン(プロフ) - ありがとうございます☆すっごく楽しみにしていますp(^-^)q更新頑張って下さいね♪ (2014年7月13日 9時) (レス) id: 0719d3023f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ようこ | 作成日時:2014年5月1日 17時