温かい ページ18
宿舎に居ると、弟や家政婦さんに任せっきりで、このままじゃ家事の一切出来ない男になる!と危機感をもって一人暮らしを始めたのは、3ヶ月ほど前。
一人だけの自由な時間が増えた反面、帰ってきた時の真っ暗な室内とか、ただいまがこだまするだけの廊下とか、無言で食べるご飯とかが、段々辛くなってきちゃって、夕飯を食べなくなった時期もある。
その時からすると、随分楽しいお夕飯の席だった。一生懸命食べるAを見ているだけで満足する。
きゅうりを除けちゃダメ、とか残さず食べなさい、とか好き嫌いの多い僕が言うのも不思議な感じがする。
二人でお風呂に入っていると、Aが熱くてもう湯船に浸かっていられない、と飛び出して行った。まだ42度には慣れないみたいだ。
「冷えないように首にタオル巻くんだよー」
うん、と遠くから聞こえてくる。手短に僕も洗髪を終わらせ、ドライヤーを手に、口に歯ブラシを突っ込んでリビングへ行った。
地べたに座ってテレビを見ていたのだろう、床にリモコンが転がっている。
A「私も歯磨き!」
髪が濡れたままのAがピンクのパジャマを着て、洗面所に消えて行った。その後を追って僕もそっちへ。
洗面所の鏡の前で二人で並んで歯磨きをする。
どうぞどうぞ、と二人でコップを譲り合って、笑った。
A「オッパ!」
床に寝転がってテレビを見る僕のお腹に、Aが飛び乗ってきた。ぐえ、と思わずアイドルらしくない声が出た。
「あー、明日オッパ早起きだから、6時に起こして」
A「いいよー」
僕の胸に頭を預けるAの体をそっと引き寄せた。
子供って、どうしてこんなに体温が高いんだろう。安心する。
「植物図鑑、読んでて楽しい?」
A「うん、今はね、キノコのとこ読んでるの」
Aの喋る声が、僕の胸に直に伝わってきて、小刻みに振動した。
「そうなんだ」
A「オッパ知ってる?OOOってキノコはね、綺麗な色なんだけど、毒があるんだよ!」
なんだ、そのキノコの名前。知らないや...。
植物大好きなA。さすが目の付け所が違う。
「キノコね...美味しいよね...」
Aが温かい抱き枕の働きをするので、眠気が襲ってきた。まぶたが重たい。
このまま眠ってしまいそうで、テレビを消し、寝室に連れて行った。
A「オッパー、もう寝るの?」
「寝るー...おや...す、み..」
広めのベッドで向かい合って、僕はAを抱きしめるように眠った。
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かのか(プロフ) - おもしろい!スゴく良かった!2章読んできまーす! (2015年7月6日 8時) (レス) id: 171b30f749 (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - べっちゃんさん» べっちゃんさん、コメントありがとうございます!短編の時から、とは彼に恋しても無駄時代からですね(;゜0゜)大変です!そんな前から読んでくださっていたなんて、感謝感激雨あられです(≧∇≦)ありがとうございます!! (2014年7月18日 20時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - ヒロンさん» こんばんは!お返事遅くなってしまってごめんなさい(;_;)2章の方、ゆっくりですが更新しておりますので、よかったら訪れて下さいね( *`ω´) (2014年7月18日 20時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
べっちゃん(プロフ) - 第一章 完結おめでとうございます!短編のときから読ませて貰ってました!これからもファイティン! (2014年7月13日 12時) (レス) id: 1623f1ded7 (このIDを非表示/違反報告)
ヒロン(プロフ) - ありがとうございます☆すっごく楽しみにしていますp(^-^)q更新頑張って下さいね♪ (2014年7月13日 9時) (レス) id: 0719d3023f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ようこ | 作成日時:2014年5月1日 17時