白雪より美しい 8 ページ21
あれは、大雪の降った翌朝の事だった。
この時は、まだ何も起きていなかった。
彼も私も清いままでいられた。
いつも通り宿舎に出向くと、私はマンションの前が、誰の足跡もなく、真っさらな雪であることに気付いた。
綺麗だ。
白く柔らかく、太陽の光を反射している。
まだ、誰も外出していないのだろう。
光り輝くその場所に、足を踏み入れることが畏れ多く思えて、私は凍える空気の中、じっと立ち止まって、風に吹かれてなだらかな形になった雪をじっと見ていた。
どれほど経ったのだろうか。
何気無く正面を見ると、ジュンミョンさんが、私と同じように雪に見惚れ、動けずにいた。
「ジュンミョンさん、」
「今日は大雪でステージが中止になったから、オフなんだ。
メンバーが、Aがエントランス前で立ち止まってるのを窓から見て、迎えに行ってやれって言うから、来たんだけど...うん。動かない理由が分かったよ」
彼は二人きりになると、家政婦さん、ではなく私のことを名前で呼ぶのであった。
「綺麗だね」
彼の、天使のように優しい声が、耳を柔らかく撫でた。
あの人は、ジミンさんは、彼にこう言われた事があるのだろうか。
彼の白い肌が寒さで赤くなっている。
一面の雪を隔てて、私達は佇んでいた。
ジュンミョンさんが、私のことを、あの慈しむような目で見てくれることは、おそらく一生無い。
あの目は、彼が綺麗だと認めるものにしか、向けられないのだ。
きっと、ジミンさんは常にあの視線を受けている。
羨ましいな。
「ジュンミョンさんの...あなたの言う、恋ってどんなものなの？
どうして苦しいのに好きでいられるの？」
私の声は、静かな雪に溶けていった。
「君は...まだ知らないの？」
こくん、と頷く。
愛されたことのない私は、人を愛する能力も欠如しているようなんです。
「恋は...美しいんだ。それこそ、この白雪より美しい」
「そう...なの？」
「清く潔い愛であればあるほど、白いんだ。不純物があれば、茶色く濁ってしまう。
もちろん、辛く苦しい恋もある。
でも、幸せな気持ちになるんだ。彼女を愛せば愛すほど、自分の馬鹿さに呆れるけれど、こんな気持ち、彼女でなきゃ味わえないんだ」
「...」
彼は
消えてしまいそうだった。
半ば諦めた恋に、叶うはずのない恋に、しがみついている自分を、真白の雪に映したのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 910人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ようこ(プロフ) - タキさん» ぎゃああタキさんだ！！いつもお話読ませて頂いております( *｀ω´)感激！すほちゃんとににちゃんは自分の中で問題作なので(笑)、褒められると書いてよかったなーと思えて嬉しいです（≧∇≦）コメントありがとうございました！また短編が浮かんだ時に更新いたします！ (2014年8月4日 13時) (
レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - ちゃんさん» せふんちゃん、年下のくせに生意気ですよね(笑サイン会の後の話も考えていたのですが、短編のままの方がよりリアルなのかなーと思って、未だに後回し中(;^_^A今更新中のものが落ち着いたら、またじっくり構成を練り直します！！ (2014年8月4日 13時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
タキ(プロフ) - 初めまして！短編三つ、いっきに読んでしまいました！もう、せふんちゃんリアルにありえてそうで。思わせぶりぃ泣。すほさんは心にうっとくる感じがたまらなく。にに！足フェチ！で殺されました←。こんなに素敵なフェチ話があるなんて！と感動です！有難うございます！ (2014年7月30日 21時) (レス) id: 4c29e81185 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃん - せふんちゃんとってもキュンとくるお話でした…！思わせぶりすぎ…！ぜひぜひ、サイン会後のお話も読みたいです(^^) (2014年7月15日 1時) (レス) id: e24e9a995d (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - あーのさん» はじめまして！セフンちゃんは年下男子にひたすら振り回されるお話です！笑いつか続編を書こうと思って居るのですが、今更新中のものが2つあって、後回しにし続けて今になってしまいました...(￣O￣;)コメント、ありがとうございましたヾ(＠⌒ー⌒＠)ノ (2014年7月13日 23時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ようこ
| 作成日時：2014年4月12日 21時
