セフンちゃん 3 ページ3
3人で次の駅で降りたのだけれど、私が一瞬気を緩めた瞬間に、おじさんが私の手に噛み付いて、そのまま逃げて行ってしまった。
「痛いし、汚いし、惨めだし、何これ？」
とっ捕まえたかったけれど、逃げ足の早い犯人は、人混みの中に姿を隠してしまった。
よほど強く噛まれたのだろう、手の甲から血が出ていた。とろり、と皮膚の裂けた間から出てくる真っ赤な鮮血。
さあっと顔色が青くなった男の子。
「大丈夫ですか！？大変です、手当てしなくちゃ」
カバンからハンカチを出して丁寧に私の手を拭いてくれる。
ハンカチを持ってるなんて、几帳面だね。
私は驚きの連続で何も考えられなくなった頭でぼーっとその光景を見ていた。
「あのおじさん、痴漢するし噛み付くし...女性にこんな怪我させて。ああ、もう。ごめんなさい。僕が弱いせいで」
オタオタと狼狽して、彼は私の手の止血を行ってくれた。布越しに温かい彼の体温が伝わってくる。
それと同時にストライプ柄のハンカチに赤いシミが広がっていく。
「いいの、いいの。あなたも大変だったね。怖かったでしょう？」
ホームに次の電車がやってきて、私はそれに乗り込んだ。やはりこの電車も混んでて、人と人の間に隙間がない。学校の最寄り駅までのあと二駅分乗るのも憂鬱だった。
「えっ、血が止まるまできちんと手当てしないと...」
そう言って慌てる男の子の腕を掴んで電車に乗せる。
「学校に遅刻しちゃうよ？」
そう口に出すと大人しく従った。
彼は狭い車内の中でも両手で私の手を包み込んでくれる。
優しいんだね。
「あの、ありがとうございました。僕、驚いて何も言えなかったので...」
俯いてあまり私の顔を見ない彼を見ると、本当に哀れに思えた。
「いえいえ。捕まえてあげられなくて、ごめんね」
「いえっ、あの痴漢には地獄に落ちて欲しいとは思いますけど、お姉さんがそう言うことはないです！僕は本当に感謝してます！」
はっとして、一言。
「...ヌナ？」
その顔がとても可愛くて、思わず笑が零れた。
「高校3年生だから、ヌナかな。あなたは？」
「僕は1年生なので、やっぱりヌナでしたね」
よかった、と笑う彼。
柔らかく安心しきったその笑顔を見て、受験勉強で砂漠化していた私の荒んだ心がオアシスを手に入れた。
次は××駅、と車内アナウンスが流れた。私の降りる駅だ。
「ごめん、ハンカチ借りていい？明日返すね」
駅に降りると、車内に残った彼はうんうんと頷いていた。
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ようこ(プロフ) - タキさん» ぎゃああタキさんだ！！いつもお話読ませて頂いております( *｀ω´)感激！すほちゃんとににちゃんは自分の中で問題作なので(笑)、褒められると書いてよかったなーと思えて嬉しいです（≧∇≦）コメントありがとうございました！また短編が浮かんだ時に更新いたします！ (2014年8月4日 13時) (
レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - ちゃんさん» せふんちゃん、年下のくせに生意気ですよね(笑サイン会の後の話も考えていたのですが、短編のままの方がよりリアルなのかなーと思って、未だに後回し中(;^_^A今更新中のものが落ち着いたら、またじっくり構成を練り直します！！ (2014年8月4日 13時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
タキ(プロフ) - 初めまして！短編三つ、いっきに読んでしまいました！もう、せふんちゃんリアルにありえてそうで。思わせぶりぃ泣。すほさんは心にうっとくる感じがたまらなく。にに！足フェチ！で殺されました←。こんなに素敵なフェチ話があるなんて！と感動です！有難うございます！ (2014年7月30日 21時) (レス) id: 4c29e81185 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃん - せふんちゃんとってもキュンとくるお話でした…！思わせぶりすぎ…！ぜひぜひ、サイン会後のお話も読みたいです(^^) (2014年7月15日 1時) (レス) id: e24e9a995d (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - あーのさん» はじめまして！セフンちゃんは年下男子にひたすら振り回されるお話です！笑いつか続編を書こうと思って居るのですが、今更新中のものが2つあって、後回しにし続けて今になってしまいました...(￣O￣;)コメント、ありがとうございましたヾ(＠⌒ー⌒＠)ノ (2014年7月13日 23時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ようこ
| 作成日時：2014年4月12日 21時
