白雪より美しい 3 ページ16
賑やかに話に花を咲かせる、彼らの中へ入って行くのを一瞬躊躇する。
不用意に話しかけられたらどうしよう。
変なことを口走って、彼に馬鹿だと思われたくない。
「デザートです。よかったら食べてください」
ドキドキする胸を押さえて言うと、わあ、と声が上がる。
「美味しそうだな」
クリスさんが褒めてくれた。
「家政婦さんって日本の方なんですね。さっき初めて聞きました」
ジミンさんに話しかけられる。彼女はベクヒョンさんの隣に座っていた。
「彼」は彼女の斜め前に座り、愛おしそうな目で彼女を注視していた。
はっきりとした二重まぶたで縁取られた優しい眼が、静かに燻る想いを燃やしながら、彼女を見ている。
小さく溜息を吐いた彼。そんなに辛いならば、好きでいるのを辞めてしまえばいいのに。
私はこの女性が嫌いだ。
彼を悲しませるから。
「韓国に来て一年になります」
「えっ、そうなんですか。韓国語がお上手ですね!」
「ありがとうございます」
にこ、と笑って会話を終わらせる。
デザートをお出しして、食べ終わったお皿は回収してシンクに置いた。こんなに仕事が多くて、私は今日が終わる前に帰れるのだろうか。
もう一度食器を片付けにリビングに向かう。私は彼女の前の空になったお皿を手に取った。
突如、右手を掴まれる。
何事?
「家政婦さんの手...お母さんみたい...」
ジミンさんが私の手を撫でた。
「お母さんって...」
こんなに大人数いる前で、そんなこと言うなんて。
日々の水仕事で、あかぎれやらささくれやらで、触るのも嫌なくらい荒れてしまった私の手。
お母さんみたい、なんてわざわざ遠回しに言うなんて...どうしようもなく惨めな気分。
彼女の手の爪には、カラフルなネイルが施されていて、居ても立っても居られなくて私は手を引っ込めた。
自分で分かっているのに、この手はどうにもならないと諦めて何もしていない、そんな自分が尚更恥ずかしい。
「お皿、片付けますから」
震える声が出て、さらに恥ずかしくなって俯いた。
「もしかして、怒らせてしまいましたか?」
「...いえ」
全員の目線が私に注がれるのが分かる。
逃げるように視線を逸らすと、カイさんと目が合ってしまった。
哀れむような目で私を見ている。
かっと、羞恥心で頰が熱くなったのが分かる。
キラキラ輝く人達の間にポトンと落とされたゴミ屑みたいな気持ちになる。
...こういうの、怖くて、苦手だ...
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ようこ(プロフ) - タキさん» ぎゃああタキさんだ!!いつもお話読ませて頂いております( *`ω´)感激!すほちゃんとににちゃんは自分の中で問題作なので(笑)、褒められると書いてよかったなーと思えて嬉しいです(≧∇≦)コメントありがとうございました!また短編が浮かんだ時に更新いたします! (2014年8月4日 13時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - ちゃんさん» せふんちゃん、年下のくせに生意気ですよね(笑サイン会の後の話も考えていたのですが、短編のままの方がよりリアルなのかなーと思って、未だに後回し中(;^_^A今更新中のものが落ち着いたら、またじっくり構成を練り直します!! (2014年8月4日 13時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
タキ(プロフ) - 初めまして!短編三つ、いっきに読んでしまいました!もう、せふんちゃんリアルにありえてそうで。思わせぶりぃ泣。すほさんは心にうっとくる感じがたまらなく。にに!足フェチ!で殺されました←。こんなに素敵なフェチ話があるなんて!と感動です!有難うございます! (2014年7月30日 21時) (レス) id: 4c29e81185 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃん - せふんちゃんとってもキュンとくるお話でした…!思わせぶりすぎ…!ぜひぜひ、サイン会後のお話も読みたいです(^^) (2014年7月15日 1時) (レス) id: e24e9a995d (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - あーのさん» はじめまして!セフンちゃんは年下男子にひたすら振り回されるお話です!笑いつか続編を書こうと思って居るのですが、今更新中のものが2つあって、後回しにし続けて今になってしまいました...( ̄O ̄;)コメント、ありがとうございましたヾ(@⌒ー⌒@)ノ (2014年7月13日 23時) (レス) id: 35ef913cfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ようこ | 作成日時:2014年4月12日 21時