空白の時間17 スホside ページ46
焼き魚が美味しいと、隣のタオと話していると、閉じられた襖がガタゴトと揺れた。
『オッパ..嘘つき...』
途切れ途切れに女性の声が聞こえた。女性にしては少し低めの声。
外で何が起こっているんだろう。気になった僕はおもむろに立ち上がり、出口へと歩き出した。
4歩ほど歩いたところだっただろうか。
突然襖が両手に開き、ジョンデの背後から、女性が現れた。
「...レン...？」
セミロングの茶色い髪が、横に揺れる。
目を合わせることなく、ジョンデの背中に隠れてしまった。
女性らしいデザインの、紺色のワンピースの裾がジョンデの後ろからちらちらと顔を覗かせる。
心臓が口から出そうなんて、初めて思ったよ。
天と地がひっくり返った気さえして、僕は床を踏みしめる感覚もないまま、近付いた。
ジョンデに押されて、僕の目の前に出たレン。
少し化粧をしているだろうか、ピンク色のグロスの載った唇に目が行く。
その唇が、言ったんだ。
『ヒョン、久しぶり』って。
何も考えられなくなった。
手を伸ばして君を抱き締める。
シャンプーの甘い香り。
僕の肌をかすめるさらさらの髪。
本当に、君なんだね？レンなんだね？
...いや、レンじゃなくて、Aだね。
君もジョンデも、バカだ。
恨んでいるようなやつもいるのに。
特にベッキョンはレンを可愛がっていたから...裏切られたショックが大きかったのだろう、愛情の反動は凄まじかった。
擦り傷が、未だ癒えていない...そんな状態の、EXOに飛び込むなんて、バカだ。
君には辛い思いをして欲しくないんだ。
こんなことをしたら、何をされるか、言われるかわからないのに。
「お馬鹿さん...」
愛しい愛しいお馬鹿さん。
手に込める力をぎゅっと強くする。
クリス「随分と...長かったな」
僕の後ろから、クリスが長い腕で僕等3人をふわりと包み込んだ。
タオが、カイが、セフンが、周りに引っ付く。
続々と、レンを抱き締める腕が増えていった。
最終的には24の手が、レンを熱く抱擁した。
胸の奥からじーんと穏やかな喜びが溢れ出てくる。
団子のようになった円の真ん中で、レンが小さく泣き声をあげた。
今まで、こんなに心が通った瞬間があっただろうか。
肌が触れるほど近くにいる皆の温かい体温を感じると、自然と涙が一粒零れた。
これは、始まりだ。
前とは違う形の、僕等の新しい未来だ。
韓国に帰ったら、あの桃の飴を食べよう。
きっと、とても、甘いんだ。
おわり
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かのか(プロフ) - んー。面白かった！学生さんなのに、凄いしっかり書けてますねぇ。私は作文さえも三行書いて、詰まっちゃうので、感心。又他の作品も読んでみますね〜！ (2015年7月7日 14時) (
レス) id: 171b30f749 (このIDを非表示/違反報告)
いーさ。(プロフ) - はじめまして! 女だとばれて脱退という流れは男装してEXOに加入スタイルのお話で初めて出会いました。特に空白の時間は泣きましたー(笑) 素敵な作品に出会えて幸せです! これからも頑張ってください!! (2015年6月21日 21時) (レス) id: f44b8bb220 (このIDを非表示/違反報告)
ユネ(プロフ) - この作品に出会えてよかったです！本当に感動しました！ジョンデに女の子？って聞かれてレンとジョンデの隠れた恋愛みたいなの起こればいいな〜なんて思ってます（笑）これからも応援しています！ (2015年3月27日 14時) (レス) id: 450bd2b6d7 (このIDを非表示/違反報告)
HanAe - とても素晴らしい作品でした！あぁ、ジョンデさんすごく良い役割でした！(ただのジョンデペン)それと主人公ちゃんの本当の誕生日が私と同じだったので、オォ！ってなりました！笑 (2015年2月1日 3時) (レス) id: aed70721da (このIDを非表示/違反報告)
海老(プロフ) - ほんとにようこさんの作品全部大好きです。涙が止まらなくて胸がギューってします。笑 できればこれからも小説を書きつづけて欲しいです… (2015年1月10日 0時) (レス) id: ca5beaaf03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ようこ
| 作成日時：2014年3月28日 19時
