穢れた天使 (ページ2)

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エルと出会ったのは、半年前だった。
体調を崩し、病院へ向かった時に受付に綺麗な人がいるな。と熱で気だるいながらも思っていた。
待合室には人が多いが、オーラがないのか気づかれにくいおかげで騒がれずにいた。
病院特有の匂いや温かさ、小声で聞こえる会話が眠り歌のように眠気を誘う。
壁に頭を預け、少しだけ目を閉じていよう。

「ーーーー氏、キュヒョン氏」

心地よい声に呼ばれ、ゆっくりと目を開けた
いつの間にか寝てしまっていたのか。
寝ぼける脳は、ここがどこだったか即座に思い出せず、目の前にいる美人な女性に見惚れた。

「お身体がしんどいと思いますが、次ですので起きてくださいね。」

マスクをしていても分かる優しく微笑む彼女は天使のように思えた。
そう言えば、天使と呼ばれてるエルに声が似ている気がする。
ドキドキと高鳴る胸は、熱のせいではない。
彼女を僕のものにしたい。と本能が強く思った。

帰り際、会計を支払ってる時に、彼女の名札を見る。《ソヨン》
白い肌に、煌びやかな髪だから、ハーフか、欧州の人かと思っていたが、韓国名で少し驚いた。
ソヨン…心の中で、呟いたつもりが、声に出ていたみたいで「何ですか？」と聞かれ慌てて

「あ、いや、ソヨンさんて“天使の歌声”のエルに声が似てますよね、」

と、口早に言ってから、何を言ってるんだと後悔した。
案の定、目をパチクリとさせるソヨンさんに、やってしまった。熱のせいだと言い訳しながら、「なんて、ね。」と空笑いする。

「ふふっ、面白いですね。流石と言いますか、ミュージシャンだと耳がいいんですね。」

「え、それって…」

「こちらお釣りです。お大事にしてください」

声をかける隙を与えない対応に、言葉を返すことができずそのまま病院を出ることになった。
もしかして、まさかなぁ…と先ほどの意味深な言葉に、もやもやしながら握りぱなしだったお金を財布に入れた。
そういえばこれから薬をもらいに行かないといけないんだったな。
診断書と領収書に軽く目を通すと、領収書の下に電話番号が書かれていた。

「え？？？？うそっ、は、まじか」

思わず声にでるほど驚きが隠せない。
いつの間に書かれたそれは名前はないが、きっとソヨンさんのだろう。
こんなラッキーが、あるなんて風邪万歳だ。
すぐにでも電話をかけたいが、仕事中だろうから出れないだろう。
今は我慢して、夜にかけることにした。