♯62 初めての気持ち ページ13
智「もしかして…ニノの事？」
ニノの事…
うん…カズの事だよ
私をこんなに苦しめるのも
ドキドキさせるのも
いつもカズだよ…
いつの間にか私の心はカズでいっぱいだった
ううん、いつの間にかじゃないか…
最初から…
きっと子供の頃からずっと…
私にはカズの事しか見えてなかったんだ
どうしてこんな簡単な事に気付かなかったんだろう？
「私、カズが好きです」
初めて自覚した、「好き」っていう気持ち
今まで好きな人がいなかったのなんて当たり前じゃん
だって私はカズが好きなんだもん
幼なじみだけど好きなんだもん
智「…うん」
大ちゃん先輩は何も言わずに優しく微笑みながら話を聞いてくれる
それだけで安心する
「でもカズには、好きなヒトがいるんです」
智「…うん」
「だから私は、ただの幼なじみでいいんです」
智「……うん」
もし私が幼なじみじゃなかったら…
きっと私はカズの目に止まる事もないし
今みたいに優しく笑いかけてもくれない
そんなのきっと堪えられない
そうなるくらいなら、ずっとカズの隣に…
近くにいたい
だから私は幼なじみのままでいいの
たとえ…
カズの恋愛対象になれなくても…
智「…じゃあ…気持ちは伝えないの？」
大ちゃん先輩が初めて口を開いた
「はい
もし気持ちを伝えて今までみたいに隣りにいられなくなるくらいなら、私は幼なじみでいたいです」
ただの幼なじみでいい
恋人になれなくていいから
このままでいたいの
智「…うん、そっか…」
大ちゃん先輩は「全部わかってるよ」っていう目で
頭を優しく撫でてくれた
この優しくて大きくて綺麗な手が
私の泣きそうな心を救ってくれたんだ…
和「あれ？智じゃん
…何してたの？」
何も知らないカズはキョトンとして私と先輩を見てる
「秘密♪」
和「は？なんだそれ」
って少し拗ねた顔をするから
「ふふふ さっ帰ろ！」
ってカズの背中を強く押した
一瞬大ちゃん先輩の方を向いて カズに気付かれないようにニコッと笑うと
大ちゃん先輩はいつものあの癒される笑顔でニコッと笑い返してくれた
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