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「はぁ、美味しかったぁ。」
目黒「そうですね。」
先ほどの質問に答えられないまま、たわいもない話をしてケーキを食べ終えた。
目黒くんとの帰り道。
まだまだ冷える寒さ対策に、お互いの手は今日はポケットの中にある。
「目黒くん、ケーキだけじゃお腹すかない?」
目黒「あー。そうっすね。Aさんと一緒って事で忘れてました。」
「っ、あのさぁ、普通そんなことで忘れないでしょ?!」
目黒「いや、俺、一つのことしかできないんで。まじっす。」
からかっているのかと思って否定したのに、目黒くんの瞳は至って真剣そのもので。
えっと、これは、心の底から言ってる、のね?
「一つのことに集中するのは得意なんすけどね」と目黒くんは笑う。
目黒「あ、近くにめちゃくちゃ美味いラーメン屋あるんですけど、行きません?」
「え!」
【めちゃくちゃ美味いラーメン屋】って、、夜に聞くとなんて甘美な響きだろう。
うう、でもこれ以上目黒くんと一緒に居続けるのは気が引けるんだよなぁ。
目黒「…食べたいか食べたくないかでいったら、どっちですか?」
そんな私のことをお見通しみたいな目黒くんは、いつもみたいに真っ直ぐ私の顔を見て尋ねてくる。
___その目で見つめられると、嘘を、つけなくなる。
「…食べたいけど、」
目黒「じゃあ行きましょ。」
ポッケから引っ張り出された手は、目黒くんのと繋がってさらに熱を持つ。
ご飯に行かないことよりも、2人きりの時に振り解けない手の方が気にしなきゃいけないのかもしれない。
でも、いつも、私を連れ出してくれるこの少し強引な手を、私は振りほどけないままでいる。
なぜだろう。
深澤さんに感じるドキドキと、目黒くんと一緒にいる時のドキドキはどこか違う。
目黒くんが引っ張っていってくれる世界に、少しだけワクワクしている自分がいる。
だから多分、この手にどこか期待している。
深澤さんを好きで好きで苦しい今から、解放されるかもしれない未来があるんじゃないかって。
だけど深澤さんを好きなままで、流れに身を任せてしまう意志の弱い私を。
運命は、許してくれない____。
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たぬ(プロフ) - 塩さん» 胸が暖かくなるやさしいコメントをありがとうございます。まだまだ上手く書けないですが、これからも楽しんで頂けるようがんばります!読んでくださりありがとうございます。 (2月23日 20時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
塩 - ふわふわしてて可愛らしくて、綺麗な文でつくられているのでとても好きな作品になっています𓈒𓏸これからの展開も楽しみにしています…! (2月21日 22時) (レス) id: 2759139232 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - 翡翠さん» 続きを楽しみにして下さり、コメントもありがとうございます!泣いて下さるなんて、申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちがせめぎ合っています。笑 続きも楽しめますように。 (2月13日 2時) (レス) @page40 id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 切なすぎて泣きながら読みました笑 続きが楽しみです (2月11日 22時) (レス) id: 6c0d9e0967 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - もぐさん» ご感想ありがとうございます。この作品が面白いのか私自身分からなくなってきていたのでそう言って頂けるととても嬉しいです。素敵な応援をありがとうございます。更新頑張れそうです…! (2023年2月24日 22時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たぬ | 作成日時:2022年11月27日 15時