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私の前に置かれた苺のショートケーキ。
目黒「お先にどうぞ。Aさんが食べてるとこ見たいから。」
変なこと言う目黒くんは無視して、目黒くんより食べるのが遅い私は、お言葉に甘えて目の前の大好きなショートケーキを先に食べることにする。
一口口に運ぶと、苺の甘酸っぱさと生クリームの甘さがふわりと混ざり合う。
おいしい。しあわせ。
目黒「Aさんってあれですか?」
「?」
目黒「好きなものを最後に残して置くタイプ。」
「あー。うん。確かにそうかも。」
目の前のお皿には、運ばれてすぐに舞台の上から下ろされた、きらりと輝くてっぺんにあった大きな苺。
最後に食べるのが私のルール。
最後の最後まで、大事なものはとっておきたいから。
「あ、」
そんな私のお皿から、持っていかれた苺。
そのまま犯人の口に運ばれて、見えなくなってしまった。
目黒「__そんで、こうやって人に奪われちゃうタイプですね。」
「……」
わかってるよ。
大事にしすぎて結局、大切なものほど手に入らない。
行動しない人間にまで神様は優しくない。
わかってる。
けど、
「…目黒くんって、あれだよね。」
目黒「なんですか?」
「結構意地悪。」
目黒「ふはっ」
目黒くんは睨む私なんかお構い無しに、可笑しそうに笑う。
目黒「反撃が可愛すぎます。」
目黒くんはそう言って、ニコニコ満足そう。
なんなんだこの子は。私より年下なのに、私より一枚も二枚も上手。
……勝てない、なぁ。
店員「お待たせしました。」
目黒くんの意地悪に次はどう反撃しようかと考えていると、目黒くんが頼んだ苺タルトがテーブルに置かれた。
それは目黒くんのフォークで掬い上げられ、次の瞬間私の前に差し出される。
「え?」
目黒「はい、どーぞ。」
いや、だってこれって…。
俗に言う、あーんってやつでは、?!
あ、でも、タルトが落ちそう、
目黒「ほら。早く。」
___パクリ。
いつものショートケーキとは違う、味。
「おいしい……」
目黒「一つだと思うから大事にしすぎちゃうんですよ。でも、俺といたら好きなものたくさん食べれていいでしょう?そろそろ俺のこと、好きになってくれましたか?」
「っ、」
本当に君は。
いつだって恥ずかしいくらいストレートで、私の心を揺さぶって、逃してはくれないんだ。
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たぬ(プロフ) - 塩さん» 胸が暖かくなるやさしいコメントをありがとうございます。まだまだ上手く書けないですが、これからも楽しんで頂けるようがんばります!読んでくださりありがとうございます。 (2月23日 20時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
塩 - ふわふわしてて可愛らしくて、綺麗な文でつくられているのでとても好きな作品になっています𓈒𓏸これからの展開も楽しみにしています…! (2月21日 22時) (レス) id: 2759139232 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - 翡翠さん» 続きを楽しみにして下さり、コメントもありがとうございます!泣いて下さるなんて、申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちがせめぎ合っています。笑 続きも楽しめますように。 (2月13日 2時) (レス) @page40 id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 切なすぎて泣きながら読みました笑 続きが楽しみです (2月11日 22時) (レス) id: 6c0d9e0967 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - もぐさん» ご感想ありがとうございます。この作品が面白いのか私自身分からなくなってきていたのでそう言って頂けるととても嬉しいです。素敵な応援をありがとうございます。更新頑張れそうです…! (2023年2月24日 22時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たぬ | 作成日時:2022年11月27日 15時