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目黒「Aさん?」
深澤さんの手がゆっくりと離れて、代わりに覗き込むように目黒君の顔が私に近づく。
ち、近い……!
営業の人ってみんな距離感おかしい!
目黒「顔、赤いっすね。」
きっとその目黒くんの発言は、深澤さんと話してたからだってわかってて言っているんだろう。
ちょっとだけからかうみたいに口角が上がっているもん。
……やっぱり、意地悪だ。
「いや、大丈夫。」
目黒「えー、ほんとですか?熱、あるんじゃないっすか?」
「……目黒くん、うるさいよ。」
楽しそうに私の様子を伺ってくるその姿にいたたまれなくなって、ドスッとその体を肘で押すと、目黒くんはフハハって声を出して笑う。
うん。やっぱり、からかってたね?
深澤さんもいるのに、そういう意味でからかってくるなんてタチが悪い。
プイっと目黒くんから顔を背けると「あはは、すみません。」って謝ってくるけど、無視無視。
深澤「……なんか、二人仲いいね?」
「え、」
それまで静かだった深澤さんは、私たちのやり取りを見てそう言って笑う。
なんだか少し寂しそうなのは気のせいだろうか。
「全然!仲良くないですっ」
一方的にからかわれてるだけです、先輩なのに。
仲いいとかじゃない。
そりゃあ、少しだけ飲みに行って思ったより話しやすいな、なんて思ったけれど!
からかうのやめてくれる?って思いを込めて目黒くんを見上げると、相変わらず楽しそうにニコニコ笑っている。
なんでそんな楽しそうなの?
目黒「そう見えますか?嬉しいっす。」
深澤「え、何、……目黒、そういう感じ?」
目黒「はい。俺、今頑張ってるところです。」
「ちょ、」
深澤「……」
いやもうほんと、何言ってるの!?
深澤さん黙り込んじゃってるよ!?
タイミングよく来たエレベーターに、これ以上何も言わせないよう思わず目黒くんの腕を引っ張って乗り込む。
「はぁ……」
思わずこぼれたため息。
目黒「ふっかさんのこと、置いてきてよかったんですか?」
「良くないよ!もう!」
目黒「ふはは、いてっ、ふふ。すみません。」
せっかく朝から深澤さんに会えてラッキーだと思ったのに!
なんて気持ちを込めて、先程よりも強く叩いたのに、目黒くんは嬉しそうに笑っていた。
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たぬ(プロフ) - 塩さん» 胸が暖かくなるやさしいコメントをありがとうございます。まだまだ上手く書けないですが、これからも楽しんで頂けるようがんばります!読んでくださりありがとうございます。 (2月23日 20時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
塩 - ふわふわしてて可愛らしくて、綺麗な文でつくられているのでとても好きな作品になっています𓈒𓏸これからの展開も楽しみにしています…! (2月21日 22時) (レス) id: 2759139232 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - 翡翠さん» 続きを楽しみにして下さり、コメントもありがとうございます!泣いて下さるなんて、申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちがせめぎ合っています。笑 続きも楽しめますように。 (2月13日 2時) (レス) @page40 id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 切なすぎて泣きながら読みました笑 続きが楽しみです (2月11日 22時) (レス) id: 6c0d9e0967 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - もぐさん» ご感想ありがとうございます。この作品が面白いのか私自身分からなくなってきていたのでそう言って頂けるととても嬉しいです。素敵な応援をありがとうございます。更新頑張れそうです…! (2023年2月24日 22時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たぬ | 作成日時:2022年11月27日 15時