じゅーろく ページ16
一人でホームに佇む、午後6時。
こんなに早く会社を出れたのに、何故か足取りは重い。渉くんと約束している焼肉屋さんに直で向かうため、家と反対の電車に乗ろうと、電車を待っている。
私の周りには、スーツの人や制服を着た人がわんさか沸いている。
その騒がしさを忘れるかの様に、今日の出来事を一人振り返っていた。
まだ、誰にも言っていない。
千羅くんにすら、言えてない。社長に呼び出された事すら、言ってない。
勿論、しーくんや、優くんにだって。
言えるならとうの昔にすんなり行っている筈だろう。
「Aー」
そんな私の悶々とした考えを遮ったのは、優くんだった。
噂をすればなんとやら、いつも通りのゆるゆるっとした可愛い格好で、ぶんぶんと腕が引きちぎれそうな程手を振っていた。
マスク越しでも分かるにこにこの笑顔に、ふと私も気が抜けて笑ってしまった。
『優くーん!!』
素早く駆け寄ると、スーツやぁ、なんて可愛らしく驚いている。
『会社の帰りでね、優くんは?』
「僕はね、ライブのリハーサルの帰り!あれ、でもAって反対じゃなかったっけ??」
こて、と首をかしげた無自覚あざと天使。
ええ、とても様になっていますよ。当たり前じゃないですか。
『それがね、今から渉くんと焼肉行くんだ!』
「そうなん!?えー、僕も一緒に行きたーい」
『良いよ良いよ、じゃあ飛び入り参加して渉くん驚かせちゃお!!』
うぇーい、とさっきまでのテンションが急上昇する。流石赤色のハイテンション王子。(自分で勝手に付けた)
人の暗い心を晴らしてくれますな!!
「てかてか、スーツ姿のAって新鮮!!!」
いつも私服だもんね、と言葉を返す。
「あ、そうだ、センラは?」
『まだ仕事。後輩が失敗しちゃったのを直してるみたい。』
早く仕事を終わらせた私は、千羅くんに手伝うか聞いたが、うらたんと約束あるんやろ?と営業スマイルで送り出してくれた。
うーん、イケメン。
明日顔が死んでいたら、お昼でも奢ってあげようかな。
「へぇー…大変やなぁ」
御愁傷様や、と言っていたので、そんな漢字ばかりの単語知ってるんだ、と心の中で馬鹿にしてしまった。
声に出てないからセーフ。顔に出てたらイエローカードだけど。
「てかさー歌ってたらさー」
テンポ良く話が進んでいくので、相槌を打つ。コロコロと世話しなく話題が変わって行くので、気付かない内に電車が来た。
「んでな、」
関西人故のマシンガントークと言う奴か。
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ぽにょはふねをおいかけている - 三度の飯より華声が好きさん» 間違えてました!!!直ちに修正致します。(ご指摘ありがとうございます)これからも読んで貰えると嬉しいです^^; (2018年12月3日 19時) (レス) id: 3949c433dc (このIDを非表示/違反報告)
三度の飯より華声が好き(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます!失礼かもしれませんが、じゅーろく話で大阪人と書いてありますが、坂田さんは大阪ではなく、兵庫出身の方です。一応直さないとって思ってすみません、、、 (2018年12月2日 23時) (レス) id: af24b820c6 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにょはふねをおいかけている - 優帆さん» コメントありがとうございます!!作品気に入って貰えたみたいで嬉しいです!これからも見てやって下さい!! (2018年11月30日 18時) (レス) id: 3949c433dc (このIDを非表示/違反報告)
優帆(プロフ) - コメント失礼します〜!この作品大好きです。更新頑張ってください!! (2018年11月29日 19時) (レス) id: e9cc48fd0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽにょはふねをおいかけている | 作成日時:2018年11月25日 15時