・・・ ページ8
まさか…かっちゃんにバレているとは。
思いもしなかったかっちゃんからの言葉に、多少の動揺をしつつもスマホから目線を上げて出久を見る。
「だってさ…高校の時はお茶子ちゃんが近かったし、今はみんなのヒーローじゃん……」
現在出久は、オールマイトの様な平和の象徴としてヒーローのトップに君臨してる。
本人は萎縮してるけど、誰でも助けてしまうその姿に憧れる人は少なくなくて。
街中で耳にする出久を「かっこいい」という人々の会話に嫉妬したこともあった。
何度も、" みんなの " じゃなくて、" 私だけの " ヒーローでいてほしいと思ったり。
そう思うと、私は付き合っているわけでもないのにヤキモチ妬きすぎだと思う。
「はぁーあ。なんで出久なんだろ」
「知るかんなこと」
酷いな。
何時から好きだったと聞かれても分からない。気付いたら好きだった。
出久の優しいところも、真っ直ぐでかっこいいところも、強くて泣き虫なところも。
全部が私だけのものになってほしかった。
「好きだなぁ…やっぱり」
だから、耐えられないんだ。
鼻の奥がツンとして泣きそうになるのを、奥歯を噛み締めて抑える。
「…帰んのかよ」
「うん、辛いし、明日仕事だし」
私には視線もくれず、みんなに囲まれた出久を見てるかっちゃんにそう言う。
「……後悔すんなよ」
今日は変なかっちゃんに「変なの」とだけ告げ、コートを着て鞄を手にし、みんなの方を向きながら轟くんに声をかける。
「私、明日早いからもう帰るね。ごめんっ」
楽しそうに笑う出久を見ないようにしてそう言い残す。
「あぁ…其処まで送ってく」
「いいのに、そんなの」
真顔のまま立ち上がり、私を送るという轟くんに手を横に振っても、頑なに送るといい続けるから、仕方なく折れる。
「見送りありがと。じゃあ…また何時かね」
お店の出入り口で振り返って、轟くんにお礼を言う。
「あぁ……気を付けろよ」
何処か寂しそうにそういう彼の肩をポンポンと叩きながら、
「ヒーローショート。応援してるよ、ファイトっ！」
にっと口角を上げて笑い、片手でガッツポーズを作る。
少しの間吃驚したのか、口を半開きにして私をまじまじと見つめてくる轟くんに恥ずかしさを感じるも、
ふっと表情を和らげ、ありがとうと言う彼に安心する。
「それじゃ！」
手を振って彼に背を向け歩き出す。
暫く行ったところで涙が溢れ出そうになって、慌てて手の甲で目尻を拭い、走り出した。
………
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おやたぬき(プロフ) - ゆきかきさん» あらあらあら！喜んで頂き嬉しいです！！！返信遅くなり、申し訳ありませんでした！！ (2019年9月7日 15時) (
レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきかき - めっっっっっっっっっさ！よかったぁぁぁ！爆豪と轟好きなんでよかった！あ、天国さんが呼んでいるぅ？ (2019年8月28日 13時) (レス) id: e9bda3ff7a (このIDを非表示/違反報告)
おやたぬき(プロフ) - ゆらさん» 返信遅くなりすみません！！リクエストありがとうございます！！上鳴君ですね！！了解しました！！！ありがとうございます！！！ (2019年5月29日 21時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - リクエスト失礼致します。上鳴で糖分多めのお話お願いできますかね？上鳴君が嫉妬しちゃう...的なシチュエーションで。(長めに書いてくださると嬉しいです)いつでもお待ちしております！！ (2019年5月26日 17時) (レス) id: dc71ed74e3 (このIDを非表示/違反報告)
おやたぬき(プロフ) - 夜剣さん» んんん！！ありがとうございます！！！嬉しくて口角めちゃ上がってます！これからもお願いします！！ (2019年3月25日 13時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おやたぬき | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sakuhi/
作成日時：2018年9月29日 22時
