-30 ページ30
.
「ごめん、A」
「グク…」
「ごめん！本当に、ごめん…」
ジョングクは今にも泣きそうな顔になりながら、私を今度は正面から抱きしめた。
かすかに彼の体は震えていた。
「ごめん。Aの自由を奪って。
俺は自分のことしか考えてなくて…俺は…」
「グク、大丈夫」
ゆっくりと背中を撫でてあげると彼は少し落ち着いたようだった。
呼吸も心臓も早い。
「行ってもいいよ。沖縄」
「ほんと？」
「うん、楽しんできて」
「……ありがとう！」
穏やかに微笑む彼はとても儚げで不安になった。
「本当にいいの？？」
「うん。束縛してごめん」
「ううん。私のためを思ってでしょ？」
「……」
「なら嬉しいよ」
私も彼を抱き締め返す。
とても優しい力を込めてくれる彼。
心地が良かった。
「でもちゃんと連絡してね」
「うん、もちろん！」
「あと寝る前、きっとワクワクしすぎて眠れないと思うから、ユンギ先生から貰った薬をちゃんと飲むこと」
「わかった」
沖縄の写真はすでに用意してある。
ミナが以前沖縄旅行に行った時の写真がある。
帰ってきたらそれを彼に見せればいい。
なんで私の写真がないのかと聞かれたら、なんとか誤魔化す台詞を考え中だ。
もちろん架空の沖縄旅行のスケジュールも決めている。
いつ、何時に、どこへ行くのか。
しっかり記憶した。
これで完璧なはず。
連絡する時は静かな場所でしよう。
もし人がいる場所だったら、周りの人の韓国語が電話に入ってしまうかもしれない。
ホテルでならテレビ電話をしてもバレないかも。
早速私は脳内で韓国行きの計画を立てていた。
彼には本当に悪いと思う。
でも、真実が知れるなら知りたい。
知ってしまったとしても、平常心を忘れなければきっと大丈夫。
私たちなら大丈夫。
きっと…。
その日、ジョングクは早々に仕事を切り上げて私にやたらくっついてきた。
すでに寂しいのかな。
「やっぱり行くな」と言われたらどうしよう。
食後のリンゴをうさぎの形に切っている私を、真剣な表情で見ているジョングク。
「グクなに？」
「ううん。上手いなって」
「今更？」
「うん。さすがA」
「ありがとう」
ぽんぽん、と頭を撫でられた。
くすぐったくて、嬉しい気持ちになる。
「いつ行くの？」
「来週の水曜日からだよ」
来週。
私は韓国へ行く。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1146人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ソラン(プロフ) - shinov347さん» コメントありがとうございます！そんなこと言って頂けるなんて、嬉しいです(^^)続編頑張ります！これからもよろしくお願いします！ (2018年8月30日 19時) (
レス) id: 8103dd882b (このIDを非表示/違反報告)
shinov347(プロフ) - この作品！！本当にびっくりするほど面白くて、興奮しっぱなしでした。。。作者様天才ですほんとに。続き心から楽しみに待っています。このストーリー思い付いた作者様本当に神ってます。ほんとに。 (2018年8月30日 18時) (レス) id: 7f3f1e52e8 (このIDを非表示/違反報告)
ソラン(プロフ) - ちむちむさん» ありがとうございます！ちょっと展開急ぎすぎた感ありますが、最後までぜひ読んでください〜！ (2018年8月30日 12時) (レス) id: 8103dd882b (このIDを非表示/違反報告)
ちむちむ - 今見ました！凄い展開ですね！楽しみです！頑張ってください！ (2018年8月29日 23時) (レス) id: 44bb68e7e6 (このIDを非表示/違反報告)
ソラン(プロフ) - うゆ子さん» コメントありがとうございます！第1章、なんとか終わりそうです^ ^ぜひ最後まで見届けてください！ (2018年8月29日 22時) (レス) id: 8103dd882b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ソラン
| 作成日時：2018年8月21日 20時
