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ジョングクは私を後ろから抱きしめたまま、少し上を向いて考えている。
「ねえ、ダメ?」
「やっぱり心配なんだけど。二泊三日も。沖縄なんて、遠く離れたところ」
「でもミナもいるし…」
「俺はいないじゃん」
「それは確かにそうだけど…」
思った通り、彼は乗り気になってくれない。
そう簡単ではないとは分かっていたつもりなのに。
さっきは一気にテンションが上がっていた分、なんだか今度は一気に悲しくなってきた。
体がずしっと重い。
「別に今じゃなくても良くない?」
「じゃあいつならいいの?」
「……もっとAも落ち着いてから」
「なに?落ち着くって。私は落ち着いてる」
「ユンギ先生を呼ぶ必要がなくなるまで」
「あれから呼んでない」
「でもあれから一年も経ってない」
どんどん彼の声にも不機嫌の色が現れて来ている。
ああ、いざとなったら泣き落としだとか考えていたけれど、本当に泣きそう。
これはちょっとつらすぎる。
「私のこと、本当に好き?」
「は?当たり前でしょ?」
「私が今こんなに悲しんでるのに?」
「…」
そっと彼の顔を見つめる。
今にも泣きそうな顔をしているだろう。
少し彼がぼやけて見える。
「ねえ、お願い。行きたいの。せっかくできた友達なのに」
「…」
「私の、記憶が無くなる前の友達はどこにいるのるの?」
「!」
彼は明らかに動揺していた。
「ねえ。なんで?」
「……会っちゃったら、また事故のこと思い出しちゃうかもしれないから」
「……本当に?」
「………うん」
「「…」」
しん、と静まり返る部屋。
パソコンがたまにブゥゥンと機械的な音を出す。
それ以外に音がない。
「私、永遠に貴方から離れないで生きていかなきゃいけないの?」
ポロリと出た言葉だった。
こんなこと言うつもりなかった。
だけど、自然と出てしまって止められなかった。
「…A」
「お願い。友達と旅行くらい許してよ…」
「別に俺は…」
「ねえ、グク。お願いだから…」
縛り付けないで………
頰を冷たいものが伝う。
涙だ。
初めて彼の前で泣いた。
冗談で泣こうかな、なんて言っていたのに。
自然と涙が溢れた。
そんな私を見た瞬間、ジョングクはサッと青ざめる。
そして私から離れて正面に立った。
青ざめて動揺しながら私を見下ろしている。
その顔に、なんとなく見覚えがあった。
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ソラン(プロフ) - shinov347さん» コメントありがとうございます!そんなこと言って頂けるなんて、嬉しいです(^^)続編頑張ります!これからもよろしくお願いします! (2018年8月30日 19時) (レス) id: 8103dd882b (このIDを非表示/違反報告)
shinov347(プロフ) - この作品!!本当にびっくりするほど面白くて、興奮しっぱなしでした。。。作者様天才ですほんとに。続き心から楽しみに待っています。このストーリー思い付いた作者様本当に神ってます。ほんとに。 (2018年8月30日 18時) (レス) id: 7f3f1e52e8 (このIDを非表示/違反報告)
ソラン(プロフ) - ちむちむさん» ありがとうございます!ちょっと展開急ぎすぎた感ありますが、最後までぜひ読んでください〜! (2018年8月30日 12時) (レス) id: 8103dd882b (このIDを非表示/違反報告)
ちむちむ - 今見ました!凄い展開ですね!楽しみです!頑張ってください! (2018年8月29日 23時) (レス) id: 44bb68e7e6 (このIDを非表示/違反報告)
ソラン(プロフ) - うゆ子さん» コメントありがとうございます!第1章、なんとか終わりそうです^ ^ぜひ最後まで見届けてください! (2018年8月29日 22時) (レス) id: 8103dd882b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソラン | 作成日時:2018年8月21日 20時