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少し歩いたところにあった静かな感じのカフェに入った。
「ここのナポリタンってやつが凄く美味しいの」
「へえーどんなの?」
「パスタみたいなやつ」
「じゃあそれにする!」
さっきの話はカフェに着いてから自然と終わった。
何事も無かったかのように。
すぐに運ばれてきたナポリタンを2人で食べる。
黙々と。
「美味しい。今度作ろうかな」
「料理はいつもAなの?」
「うん。彼は洗い物担当かな」
「へえー、あ、旦那さんはどこの人?」
「釜山だよ」
これは多分真実だ。
釜山の方言がたまに出るから。
でも私はその釜山の方言に親しみを感じることはない。
「それこそどこの学校出身なの?」
「そういえば、聞いたことないかも」
いつも自分の話ばかりで、ジョングクの話をちゃんと聞いたことがなかった気がする。
なんだか申し訳なくなった。
「ふーん…。なぁ、どう思ってるのAは」
「なにが?」
「記憶のこと。なんか、変じゃない?」
「うん…」
また自然とその話に戻ってしまった。
残りを平らげて、ドリンクのコーヒーをゆっくり飲む。
やっぱり、コーヒーの香りがすごく懐かしく感じる。
でももっと濃い香り。
そう、コーヒーというより、コーヒー豆の香りがすごく懐かしい。
「本当のことを知りたいの」
「でもそれで、もし旦那さんが全部嘘をついてたとしたら?」
「…どうしようね。でも、好きなままだと思う」
「どんな事情があっても?」
「うん、だって3年も夫婦として暮らしてる。ずっと一緒にいるんだもん」
「そっか…」
何があったとしても、私は彼を嫌いになることはないだろう。
たぶん、嫌いになれない。
一度心から愛してしまったら、嫌いになることはすごく難しい事だと思う。
「まあ、何か進展があったら教えるね。記憶が少し戻ったりとかさ」
「そんなことあるの?」
「今まで一度もない」
「じゃあ希望は薄いな」
「ね」
そう考えると、ユンギ先生の言っていた事は正しいのかもしれない。
真実を知ってしまえば、私とジョングクの関係が崩れてしまうのかもしれない。
今が幸せならそれでいい。
今の幸せを壊したくない。
なら、あまり考えるのはやめよう。
真実は保留だ。
「さて、そろそろ本でも読みに行く?」
ジミンが立ち上がる。
「うん、行こっか」
カウンターの前を通った時、やっぱりコーヒー豆の匂いが私の鼻にやけに付いた。
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ソラン(プロフ) - shinov347さん» コメントありがとうございます!そんなこと言って頂けるなんて、嬉しいです(^^)続編頑張ります!これからもよろしくお願いします! (2018年8月30日 19時) (レス) id: 8103dd882b (このIDを非表示/違反報告)
shinov347(プロフ) - この作品!!本当にびっくりするほど面白くて、興奮しっぱなしでした。。。作者様天才ですほんとに。続き心から楽しみに待っています。このストーリー思い付いた作者様本当に神ってます。ほんとに。 (2018年8月30日 18時) (レス) id: 7f3f1e52e8 (このIDを非表示/違反報告)
ソラン(プロフ) - ちむちむさん» ありがとうございます!ちょっと展開急ぎすぎた感ありますが、最後までぜひ読んでください〜! (2018年8月30日 12時) (レス) id: 8103dd882b (このIDを非表示/違反報告)
ちむちむ - 今見ました!凄い展開ですね!楽しみです!頑張ってください! (2018年8月29日 23時) (レス) id: 44bb68e7e6 (このIDを非表示/違反報告)
ソラン(プロフ) - うゆ子さん» コメントありがとうございます!第1章、なんとか終わりそうです^ ^ぜひ最後まで見届けてください! (2018年8月29日 22時) (レス) id: 8103dd882b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソラン | 作成日時:2018年8月21日 20時