［怪盗キッド］海の上で、この世で一番のマジックをあなたに。 (ページ24)

今日:51 hit、昨日:63 hit、合計:512,754 hit

22話快斗side ページ24

《快斗side》

A「あなた、誰？」

快斗「月下の奇術師、怪盗キッドですよ、お見知り置きを。」

A「違うっ！！そうじゃない…」

…気づけば、俺は彼女の震える手を握っていた。

ある記憶が蘇る。思い出したくもねーのに…
なんで、俺、こいつのためにこんな気持ちになるんだろうか。
いけねぇーよ、俺…。
だって、もう、相手決めてんだろ？

でも、なんとなく同じシチュエーションに、俺も身を委ねていた。

その時。

A「快斗？ねぇ、快斗？」

キッド「！！！…。」

驚いたなんてもんじゃなかった。
キッドだって疑われて、だったらと先手を打ったはずなのに…。
まさか、ここまでばれてたなんて、考えもつかない。

A「やっぱり、快斗。」

彼女は、怪我をした手をかばいながら、ポケットの中を探し始めた。
なんなんだよ…？

A「あ、ぁ、あの時のハンカチ。返しそびれちゃって…」

キッド「これは…！」

おい、待ってくれ。
どうして…？

俺は、あの時が苦い思い出で、でもあいつのこと大好きだったから、せめてこのハンカチだけは持ってて欲しかった。

でも叶わないと確信してたから、

俺は、もう誰かを好きとかそういう感情は捨てたんだ…

キッドという仮の姿で、たくさんの女の子の手にキスをしてたのも…

A「お洗濯したけど、落ちきれなくてっ…」

…自分を抑えるため。

A「その、お父さんの大事なハンカチって言ってたから…ぁ。」

でも…今になって、確信するんだ。
俺はやっぱり、Aが好きだって。
目の前の…こいつが好きだって。

A「ごめ……」

A「ぁっ///」

快斗「…A。なんで、いなくなっちまったんだよ」

情けねえなぁ…。
キッドの姿で、涙なんて見せたくなかった。

俺は、腕の中の幼馴染を、できるだけ優しく包み込んだ。