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「……貴方は、なんなんですか」
自分のことは必要最低限の事以外話さない、教えない、見せない。なのに俺達のことは全て分かっている。そんなの、不公平じゃないのか。
「あんたは自分のことは話さないくせに、俺達の事はなんでも知っている。貴方は、何がしたいんですか」
「私はただ私の仕事を全うしているだけさ。そう言う君こそ、自分の事は話していないじゃないか。お互い様だろう?」
「話さんくたって、あんたは全てを知ってるだろ」
「それが不公平だって?」
嫌いだ。こうして心情すらも読みといてくる彼女が、兎に角、嫌いだ。
俺の心の中が荒れていることに気づいているらしい彼女はそれ以上は何も言わず、無言でこちらを見つめてくる。その眼差しに、さっきのような面白がる様子は感じられなかった。さっきとは打って変わった、真剣な眼差し。
雑にデスクの上を片付けて、仮眠室に向かう。
このままここに居たら、ぶつけてしまう気がした。心中を渦巻く得たいも知れない何かを、なにも悪くない彼女に、ぶつけてしまう気がした。
「―――通り魔」
「……」
「最近、多いね」
彼女の紡いだ通り魔という単語に、取っ手を掴んだ手が固まった。掌に、汗が滲んでいく。
この人は、やっぱり、分かっている。全てを。
恐る恐る、背後を振り返る。スタンドの灯りも消え、本格的に暗くなった部屋の中で、彼女はこちらに体を向けていた。背凭れに体を預け、こうちゃんの依頼を受けていた時のように、足を組んでいる。
「依頼、あるんじゃないのか?」
「……あんたには関係ない」
「関係大有りだね。私はここの専属探偵だ。そしてその契約に、君達を守る事も含まれている。私のこの質問は権利ではない。義務だ」
足をほどいた彼女が、俺の前までやって来る。身長は俺の方が高い筈なのに、何故か足が竦む。威圧感が、常人のそれじゃない。
強がって顔を強張らせる俺に、彼女は対照的な余裕そうな微笑みを浮かべた。月明かりに照らされた笑みが、鮮明に浮き上がる。
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白菜(プロフ) - 河良紅好さん» ご報告ありがとうございます!助かりました!早急に修正させて頂きます! (2020年6月16日 22時) (レス) id: a14ef8aee6 (このIDを非表示/違反報告)
河良紅好(プロフ) - はじめまして、陰ながら白菜さんの作品を楽しく拝見させて頂いてます。大変失礼ですが、事件No.5の2ページ目の「マーキング」が「マーケティング」になっていました事をご報告させて頂きます。 (2020年6月16日 21時) (レス) id: a18b40da37 (このIDを非表示/違反報告)
るーと - この作品を読むのが最近の密かな楽しみになっています。ご無理をなさらない程度に更新頑張ってください!これからも楽しみにしてます! (2020年6月12日 21時) (レス) id: 300feac1d8 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 遅ればせながら新作ありがとうございます…! Twitterで設定をお見かけして以来ずっと心待ちにしておりまして、余りのことに学校滅ばねえかなとまで考えておりました。早速背筋の凍るような展開にゾクゾクしております、更新頑張って下さい。 (2020年6月11日 20時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
神木(プロフ) - 占ツクを開くたびに更新されてないかなーって確認するくらい更新とても楽しみに待っています!更新頑張ってください! (2020年6月11日 16時) (レス) id: ded004bcdf (このIDを非表示/違反報告)
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