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「……あぁ。どうやら、携帯灰皿を取り出したときに落としてしまったみたいだ。すまない」

「いえ、別に大丈夫ですけど……煙草って茶色のもあるんですね」

「これはキャメルのメンソールだ。フィルター部分が濃い茶色で、葉の部分は薄い茶色の煙草さ。前は吸っていたんだが、今の私にはちょっと物足りない」



 彼女が見せてくれたのは、くしゃっと潰れたCAMELと書かれたの箱だった。箱にはらくだのイラストが書かれており、名前を聞いて思い浮かべたものも案外間違いではなかった。
 そこで、ふと思い出す。先程、彼女は寝室から出てきていた。朝の記憶が正しければ、確か俺は着替えの際に脱ぎ捨てた服をそのままにしていた筈。え、なにそれはずかし。



「そういえば、さっき居た寝室散らかってませんでした?うわー、神津さん来るなら俺ちゃんと掃除しとけば良かった!ちょっと俺寝室掃除し」



 しに行ってきます。そう言い切る前に、俺の言葉は遮られた。



「―――行くな!!」

「っ……」



 急な彼女の大声に、びくりっと肩が跳ねる。普段あまり大声を出さない彼女にしては珍しいことで、初めて聞いた大声に体が硬直した。
 大人しく立ち止まった俺の肩を、彼女が優しく抱いた。そのまま寝室から遠ざけるようにして俺を玄関まで連れていき、徐に家から出される。



「……今日から君はオフィスで寝泊まりだ。ここに帰ってきてはいけない。帰るなら、私と一緒にだ。良いな?」

「え、なんで」

「良いな?」



 なにがなんだかも分からない状況で、威圧感に負けてこくりと一つ頷く。それに漸く彼女は表情を和らげ、さぁ帰ろうと俺の背中を押した。


 ……薄々、気づいていた。



「前は吸っていたんだが、今の私にはちょっと物足りない」



 ―――彼女の持っていたキャメルという煙草が、神津さんの物では無いことを、俺は……気づいてても、言えなかった。






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白菜(プロフ) - 河良紅好さん» ご報告ありがとうございます!助かりました!早急に修正させて頂きます! (2020年6月16日 22時) (レス) id: a14ef8aee6 (このIDを非表示/違反報告)
河良紅好(プロフ) - はじめまして、陰ながら白菜さんの作品を楽しく拝見させて頂いてます。大変失礼ですが、事件No.5の2ページ目の「マーキング」が「マーケティング」になっていました事をご報告させて頂きます。 (2020年6月16日 21時) (レス) id: a18b40da37 (このIDを非表示/違反報告)
るーと - この作品を読むのが最近の密かな楽しみになっています。ご無理をなさらない程度に更新頑張ってください!これからも楽しみにしてます! (2020年6月12日 21時) (レス) id: 300feac1d8 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 遅ればせながら新作ありがとうございます…! Twitterで設定をお見かけして以来ずっと心待ちにしておりまして、余りのことに学校滅ばねえかなとまで考えておりました。早速背筋の凍るような展開にゾクゾクしております、更新頑張って下さい。 (2020年6月11日 20時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
神木(プロフ) - 占ツクを開くたびに更新されてないかなーって確認するくらい更新とても楽しみに待っています!更新頑張ってください! (2020年6月11日 16時) (レス) id: ded004bcdf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白菜 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年6月9日 19時

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