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「神津さんはマンション住みなんですか?」
「いや、私は産まれも育ちも現在も一軒家だ。祖父が探偵でね、探偵事務所を引き継いで、そのままその家で暮らしている」
「へー!俺も今度その探偵事務所行っても良いですか?」
「お、良いぞ良いぞ。若い子は大歓迎だ」
腕を組み、エレベーター内の壁にもたれ掛かって微笑む彼女は、まるで絵画の中から飛び出してきたかのようだった。無機質なエレベーター内も彼女がもたれ掛かっていると言うだけでなんだか色鮮やかに見えて、そんな中妖艶に微笑む彼女は、本当に絵になる。
きっとそれは、彼女を纏うオーラも関係しているのだろうと思った。普段は暖かくて近づきたくなるようなオーラなのに、近づきすぎれば、途端に冷たく冷めきる、そんな不思議なオーラ。
彼女は自分の詮索されることをとことん嫌った。だから俺も、彼女のことに深く足は突っ込むような質問はしなかった。
「ここが君の部屋か。もっと可愛らしい感じかと思っていたが、意外に男らしくてお姉さん驚いてるぞ」
「……馬鹿にしてます?」
「まさか」
部屋に入った途端、彼女は一直線にリビングへ向かい、部屋の隅からまるで展示品を順番に見ていくようにゆっくりと練り歩き始めた。時々タンスの上を指で撫でたり、壁をコンコンと叩いている様子を、俺は少し離れた場所から見守る。
「よく物が無くなるという机はこれかい?」
「あ、そうです」
「ふーん。ベランダに近いようだな」
そう言うと彼女はガラガラッとベランダに通ずる窓を開け放ち、サンダルを足に引っかけて出ていった。風で靡いたカーテン越しに神津さんのシルエットが浮かび上がって、俺も追いかけるようにベランダへ向かう。
カーテンを手で退けてベランダに出ると、彼女は呑気に紫煙と戯れていた。虚空を見つめる横顔を覗き見るように隣に立つと、流れるように視線だけがこちらに向けられ、どきりと、心臓が嫌な音を立てる。指先が、石のように動かなくなった。
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白菜(プロフ) - 河良紅好さん» ご報告ありがとうございます!助かりました!早急に修正させて頂きます! (2020年6月16日 22時) (レス) id: a14ef8aee6 (このIDを非表示/違反報告)
河良紅好(プロフ) - はじめまして、陰ながら白菜さんの作品を楽しく拝見させて頂いてます。大変失礼ですが、事件No.5の2ページ目の「マーキング」が「マーケティング」になっていました事をご報告させて頂きます。 (2020年6月16日 21時) (レス) id: a18b40da37 (このIDを非表示/違反報告)
るーと - この作品を読むのが最近の密かな楽しみになっています。ご無理をなさらない程度に更新頑張ってください!これからも楽しみにしてます! (2020年6月12日 21時) (レス) id: 300feac1d8 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 遅ればせながら新作ありがとうございます…! Twitterで設定をお見かけして以来ずっと心待ちにしておりまして、余りのことに学校滅ばねえかなとまで考えておりました。早速背筋の凍るような展開にゾクゾクしております、更新頑張って下さい。 (2020年6月11日 20時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
神木(プロフ) - 占ツクを開くたびに更新されてないかなーって確認するくらい更新とても楽しみに待っています!更新頑張ってください! (2020年6月11日 16時) (レス) id: ded004bcdf (このIDを非表示/違反報告)
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