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「君はここに来てすぐ、仕事用の鞄を漁っただろう?一昨日から今日まで君はプライベートが忙しくてあまりここに来ていなかった。大方、休みの間に進めた仕事を拓朗君に提出しようとしたのだろう」
「そうですそうです」
「だが君はなかなか手こずり、鞄の下の方まで探していた。この時点で小さいもの、USBでは無いかと私は考えた。紙やファイルだった場合、あまり鞄の下を念入りには探さないからね。
そしてその後君が探し始めた場所も、ソファーの下やゴミ箱といった、小さい物が入り込みそうな場所だった。以下の点から、私は君が無くしたものを、仕事用のUSBだと推理した訳だ」
探偵はそんな所を見ているのか、と彼女の洞察力に普通に感動してしまった。筋の通った推理におぉっと声をあげて拍手をする。フローリングの上で正座をしたまま拍手をしている俺と、その目の前でドヤ顔をかましている彼女の光景に、周りは変なものを見るような視線を送ってきていた。
言葉だけでもかなり異質な光景なのだ。そんな光景を目の当たりにしたら、まぁそうなるだろう。
ついでに言うと、と彼女は最後に付け加えると、右手の親指で熱心にパソコンに向かっている川上さんを指差した。彼がどうしたのだろうか。
「彼が溢していたからね。君が今日こそは無くさずに持ってきてくれるかな、と」
「あ」
そこで漸く、頭から抜け落ちていたUSBの捜索を中断していたことを思い出した。錆び付いたブリキのおもちゃの如く、ぎこちない動きで川上さんの方を向けば、彼の鋭い視線が俺にぶっ刺さっていた。
うっ、俺のなけなしのヒットポイントが……。
丁寧に解説してくれた神津さんにお礼を言って、俺は再び急いでUSBの捜索を再開する。
一応家で紛失したことに気づいたのでここに来る前に家中を探し回ったのだが、今の状況からも分かるように、残念ながらUSBは見つからなかった。となると、ここに来て落とした説の方が濃厚だろう。確率論的にはほとんどあり得ないが。
「さぁでは仕事の話をしようではないか、渡辺航平君よ」
「え、あ、はい」
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白菜(プロフ) - 河良紅好さん» ご報告ありがとうございます!助かりました!早急に修正させて頂きます! (2020年6月16日 22時) (レス) id: a14ef8aee6 (このIDを非表示/違反報告)
河良紅好(プロフ) - はじめまして、陰ながら白菜さんの作品を楽しく拝見させて頂いてます。大変失礼ですが、事件No.5の2ページ目の「マーキング」が「マーケティング」になっていました事をご報告させて頂きます。 (2020年6月16日 21時) (レス) id: a18b40da37 (このIDを非表示/違反報告)
るーと - この作品を読むのが最近の密かな楽しみになっています。ご無理をなさらない程度に更新頑張ってください!これからも楽しみにしてます! (2020年6月12日 21時) (レス) id: 300feac1d8 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 遅ればせながら新作ありがとうございます…! Twitterで設定をお見かけして以来ずっと心待ちにしておりまして、余りのことに学校滅ばねえかなとまで考えておりました。早速背筋の凍るような展開にゾクゾクしております、更新頑張って下さい。 (2020年6月11日 20時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
神木(プロフ) - 占ツクを開くたびに更新されてないかなーって確認するくらい更新とても楽しみに待っています!更新頑張ってください! (2020年6月11日 16時) (レス) id: ded004bcdf (このIDを非表示/違反報告)
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