事件No.0 ページ3
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「―――どうも、探偵です」
全世界に配信されているワインレッドのソファーではなく、部屋の色とマッチしたローズブラウンのソファーに腰掛け、優雅に足を組んだ女は自らをそう紹介した。彼女の目の前に立ち、その自己紹介を耳にした男達の反応は三者三様であったが、全員が全員同じことをこの女に対して感じた。
この女、多分めちゃくちゃ変人だ。
「あぁ、名前を言ってませんでしたね。私は神津Aと言います。高学歴な貴方達とは違って、大学には特に通わなかった馬鹿なのでお手柔らかに」
高学歴なを強調した女、神津Aには皮肉のようなものを感じた。笑顔を崩さず、だが決して自分のテリトリーには入れない気迫を全身に感じ取りながら、彼女の一番近くに立っていた男が声を上げる。この会社のプロデューサー的存在、福良拳であった。
「……どうも、僕は福良拳と申します。貴方の事は伊沢の方から伺ってます。早速ですが、」
「君あれだ、ぴーって呼ばれてた子だ。ぴー君ね、よろしく」
「話聞いてます?」
「堅苦しい話は苦手なんだ。あれだろう、仕事内容。大丈夫大丈夫、私与えられた仕事はちゃんとやる主義だから」
警戒心を滲ませながらも、真面目に話を進めようとする福良の声に被せるようにして神津は声を発する。ヒラヒラと右手を振り、つまらなそうに部屋を見渡して目ぼしいものは無いか探す神津に、福良は自分だけに聞こえるような溜め息を吐いた。
振り回されていることに慣れている福良でも、ここまで自由人で読めない相手は初めてだ。不真面目そうで全てが適当そうな喋りをしているにも関わらず、その目だけは全てを見抜いているかのような鋭さがある。
堅苦しい話は全てさらりと交わしながら、ニコニコと満面の笑みを浮かべて関係の無い話を振ってくる神津の相手にも疲れたのか、福良は「そうですねー」なんて空返事をしながら、バトンを隣に突っ立っていただけの河村に投げた。
「ほら、河村も自己紹介しなよ」
「は?このタイミングで僕に投げるってお前どんな神経してんの?」
分かりやすく顔をしかめ、苦言を呈する河村の声は残念ながら福良にはたまたま聞き取れなかったらしい。残念ながら、たまたま、聞き取れなかったのである。あくまで、たまたま。
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白菜(プロフ) - 河良紅好さん» ご報告ありがとうございます!助かりました!早急に修正させて頂きます! (2020年6月16日 22時) (レス) id: a14ef8aee6 (このIDを非表示/違反報告)
河良紅好(プロフ) - はじめまして、陰ながら白菜さんの作品を楽しく拝見させて頂いてます。大変失礼ですが、事件No.5の2ページ目の「マーキング」が「マーケティング」になっていました事をご報告させて頂きます。 (2020年6月16日 21時) (レス) id: a18b40da37 (このIDを非表示/違反報告)
るーと - この作品を読むのが最近の密かな楽しみになっています。ご無理をなさらない程度に更新頑張ってください!これからも楽しみにしてます! (2020年6月12日 21時) (レス) id: 300feac1d8 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 遅ればせながら新作ありがとうございます…! Twitterで設定をお見かけして以来ずっと心待ちにしておりまして、余りのことに学校滅ばねえかなとまで考えておりました。早速背筋の凍るような展開にゾクゾクしております、更新頑張って下さい。 (2020年6月11日 20時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
神木(プロフ) - 占ツクを開くたびに更新されてないかなーって確認するくらい更新とても楽しみに待っています!更新頑張ってください! (2020年6月11日 16時) (レス) id: ded004bcdf (このIDを非表示/違反報告)
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