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「あの人すごい気迫だね。」
春乃と二回戦目の試合を見ていた。
先発ピッチャーは勿論、鳴ちゃん。
「うん…。」
さっきの鳴ちゃんの怒った顔が脳裏にチラつく。
「何かさっきから怒ってない?ずっとあの人。」
春乃の言う通り、無表情のまま荒々しく投げ、ひたすら三振の山を築いていってる。
やっぱり鳴ちゃんに何の相談も無しにこっち転校してきた事、怒ってるのかな…?
そんな事を何度も考えていると、あっという間に稲実の圧勝で試合は終わってしまった。
「今日は色々勉強させてもらいました。」
監督、選手達が他校の人達と挨拶を交わしてる中、マネのあたし達は帰り支度の準備をしていた。
今日、家に帰ったらすぐ鳴ちゃんにメッセージを送ろう。
ちゃんと話せば分かってもらえ──「きゃっ!」
急に腕を引っ張られて驚いて振り返ると、そこには膨れっ面の鳴ちゃんが立っていた。
「まじで青道のマネなんだね。」
「あ、うん…。今まで言わないでごめんね。」
「ちょーやなんだけど、何でうち来なかったの?」
「一也に謝りたかったから。」
「そんなの俺と同じ高校入ってからでもできんじゃん!!」
確かに鳴ちゃんの言う通りだ。
でも当時の自分は、一也と同じ高校に行って許しを乞うという一択しかなかった。
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作者名:おにぎり | 作成日時:2024年1月28日 22時