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成宮
「Aが一也にって。」
受け取った紫の方のウサギを一也に渡そうとしたが、首を振って受け取ろうとしない。
「…受け取れない、お前が持ってろよ。」
「渡してって頼まれたんだ、一也が持ってろ。」
強引に渡して、Aの携帯の存在も教えたが連絡先を知らないままでいいと答えた。
それからどれくらい時間が経ったんだろう、お互い無言のまま重い空気が流れる。
連絡先を知らないままでいいなんて絶対にAと何かトラブルがあったと分かるけど訊けなくて。
これで三人バラバラか寂しいなと思っていると、一也が俺に話し掛けてきた。
「これから先、俺の前でAの話はするなよ。」
「は?何で?」
「もうAのこと思い出したくないから。」
何だよそれと文句を言おうとしたが、一也の声が震えてたから何も言い返せなかったんだ。
その後もAがいなくなってから、たまに一也に会いに行っても会話が弾む事はなくて。
Aの存在の大きさに何度も気づかされては、会いたいという思いが消える事はなかった。
段々と一也と会う頻度も減って、中学生になる頃には試合で会ったら話すだけの関係になっていた。
それでも昔のように戻りたいなって思ったから、せっかく稲実に誘ってあげたのに格好つけちゃってさ!
で?何年も何年も会いたいって思ってたAがいつの間にか一也と同じ高校、しかも同じ部活のマネってさ。
ほんと笑えない、こんな酷い話ある?
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作者名:おにぎり | 作成日時:2024年1月28日 22時