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成宮
「ありがとうを言うべきなのは俺の方じゃん!!」
「Aそろそろ…あら?お友達?」
家の中から出てきた人は多分Aのお母さんで。
綺麗でどこか儚げな人だった。
「もう行くの?」
「うん、ごめんね。」
覚悟を決めたかのように大きく息を吐くと、勢いよく立ち上がって俺に手を差し伸べてくれた。
Aの手を掴んで立ち上がる。
もうそろそろ本当に離れ離れになって会えなくなる。
それなら最後に俺の想い伝えたっていいよね?
「俺ね、ずっと「一也来てくれなかったな…。」
悲しそうな顔で呟いて遠くを見つめるA。
こんな時まで俺の邪魔すんのかよ一也。
「お友達にお別れ言って車に乗ってね。」
「うん。鳴ちゃんこれ、一也にも渡しといて。」
そう言って渡されたのはウサギのキーホルダー。
「男の子なのにウサギでごめんね。色違いなのが良くて。これしかなかったんだ。」
渡されたのは紫と白のウサギ。
俺、会えなくなるって事だけで頭がいっぱいで。
こういうの何も用意してなかった。
「それと隠してた事がもう一つあって…実はあたしも友達とうまくいってなかったの。それなのにあんな偉そうなこと言ってごめんね。」
確かによく考えれば見送りに来てるのは俺一人だった。
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作者名:おにぎり | 作成日時:2024年1月28日 22時