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成宮
「来てくれてありがとう。」
「当たり前じゃん。」
一也の姿はまだ見えなかった。
「まだ少し時間あるし少し話さない?」
「うん。」
チャリを停めて、Aの後ろについていくと広い庭へと辿り着いたが閑散としている。
大きな花壇には何の植物も生えてないし、芝生も手入れがされていないのか伸び放題の状態だった。
「…酷い庭でしょ?でも家の中の方が悲惨だから、こんな所で話すしかなくてごめんね。」
首を横に振って、Aが座った石の階段に座る。
そこで家族仲が上手くいってなかった事、離婚の末の引越しだという事を初めて聞いた。
悲しかったのが、家族の相談を今まで一也にはしていたって事だった。
「一也とはお互い家族の事を話してる内に仲良くなって。悩みを聞いてもらえて少し楽になれたの。」
「……どうして俺には今まで話してくれなかったの?俺だって少しは力になれたかもしれないのに。」
今日だけは、こんな事言うべきじゃないって分かってるのに、悔しくてつい訊ねてしまう。
「話さなくてごめん、気を遣わせたくなかったから。でも、鳴ちゃんはずっと力になってくれてたよ。」
「嘘だ、俺何も「だって鳴ちゃんといる時ずっと楽しかったもん。遊んでると嫌な事忘れてたのいつも。」
Aの方こそ俺に気を遣ってそんなこと言ってくれてるんじゃないかと思ったが、正直嬉しかった。
「それってほんと?」
「ほんとだよ!いつも沢山笑わせてくれてありがとう。」
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作者名:おにぎり | 作成日時:2024年1月28日 22時