【◇】俺らのお姫様 (ページ31)

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成宮

Aに想いを告げられなくても三人でいる時は、本当に居心地が良くて俺の大好きな時間だった。

それから何度か季節が廻った後、だんだんとAの元気がなくなっていってる事に気づいた。

「Aどーしたの？元気なくない？」

「ううん、そんな事ないよ！」

無理して取り繕ってるけど、俺だって馬鹿じゃないんだ。
好きな子の作り笑いくらいすぐに分かる。

けど、もう以前の俺じゃない。

強引に聞き出すんじゃなくて、Aの方から話してくれるんじゃないかと期待して待っていた。

でも、Aが話してくれる事はなくて。

だったらせめてAには俺といる時だけでも元気になって笑っててほしかったから。

一也を巻き込んでわざと馬鹿やったり、無茶して笑いを取ったりと必死だった。

それなのに、別れは突然やってきて──。

「…明日ね、引っ越すの。」

「え？」

土曜の午後の出来事、この日の事はよく覚えている。

練習終わり、いつも通り二人に会いに行ったら一也の姿はなくて、Aに会った瞬間に言われた言葉だった。

「な、なんだよ！何かのドッキリ？わかった！本気で俺を嵌めようとして、だから一也がいないんでしょ？」

Aの表情を見れば嘘じゃないって分かってるのに信じたくなくて、早口になって捲し立てるように詰め寄る。

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