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成宮
「あっ…ありがとう!」
「A、バナナ味嫌いだぜ。」
Aが一瞬困った顔をした理由を一也が説明する。
バナナ味が嫌いなんて知らなかった。
どうしてもこの二人のようになれなくて、自分だけ知らない事ばかりで俺だけ置いてけぼりの気がして。
苛立ちと不安でいっぱいになる。
「何でバナナ味嫌いなの?これすごい美味しいから一回食べてみなよ!絶対に好きになるって!」
少しでも自分の好きな物を好きになってほしくて、嫌いだっていうのに袋を開けて強引に食べさせようとした。
「嫌いだって言ってんだろ!やめろよ!!」
Aの口元に届きそうになった時、ドンッと一也に胸を押されアイスが地面に落ちた。
「ちょっと一也…!鳴ちゃんごめんね。」
「お前、友達いないだろ?」
一也の言葉に心臓がバクバクと早くなって痛い。
「はあ?いるし!」
「じゃあ、名前言ってみろよ。」
「それは……たくまとかいと。」
本当は一也に言われた通り、仲の良い友達なんていない。
でもそんな事、知られたくなかった。
特にAだけには。
「へえ。俺、お前と同じ小学校に知り合いいるから今度訊いてみるわ。」
「さっきからなんで鳴ちゃんにそんな酷いことばっかり言うの!!」
一也を叱るAの声が何故か遠くに聞こえる。
友達がいないって二人にバレる…。
そう思うともう何も言い返せなかった。
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作者名:おにぎり | 作成日時:2024年1月28日 22時