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御幸
昔、Aがこっちにいた時は立派な一軒家に住んでただけに、今の住まいに若干驚いてしまったのが事実だ。
「中入るまで見ててやるから行けよ。」
「えっ!そこまでしてくれなくても大丈夫だって!…あの、今日はごめんなさい。」
かなり久々にシュンとするAを見た気がする。
「何が?」
「一也のこと怒らせて。」
「何で怒ったか分かってんの?」
「それは……色々と迷惑かけちゃったから。」
その色々って何だよと言い返しそうになるが、これ以上口にしたら喧嘩になると思い気が引けてしまう。
「お前も一応女なんだから少しは時間気にしろよ。」
「……はい。」
そう思うのは向こうも同じなのか、いつもだったら言い返してきそうな言葉にも突っかかってこなかった。
「じゃあもう行け、早く寝ろよ。」
「うん、ありがとう。また明日学校でね!」
階段を上り、部屋の扉の前に着くと遠慮がちに手を振ってきたので俺も小さく手を挙げる。
中に入ったのを確認して寮へと向かった。
俺って今日怒ってたのか…?
確かに苛ついてたのは事実だが、あれはAが遅い時間に寮にいたからであって。
自分の行動を思い返していると、ふと、他の奴らと仲良くしているAの様子が頭に浮かんできた。
すると、モヤッとするような嫌な感情が自分の中に広がっていくのが分かって立ち止まってしまう。
はは……何だよこれ。
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作者名:おにぎり | 作成日時:2024年1月28日 22時