7話 ページ7
その彼の一言が、私の心を揺さぶる。
私が、またショーをやれるのかわからない。しかも、一人じゃなく誰かと。
答えを戸惑っている私が、疑問を投げかける。
「__どうして、私なんですか?」
ただ純粋な疑問だった。
私なんかじゃなくても、凄い手品師なんて、探せば山ほどいるのに。
彼は私の疑問に対し、さぞ当然かであるようにこう言った。
「君の手品師としての技術や演出が凄かった、というのもあるけれど____
『優しい心を持った手品師』だったからかな」
彼の発言の意図がわからず、数回瞬きする。
私は自分の事を『優しい心を持った手品師』だなんて、一切思ったことが無かった。
___手品師として、ショーキャストとして、大切なところが私の心には無い。
それを否定のために、彼に言うつもりはない。
だから今は。
「.....ありがとうございます。...でも私は、もうショーはしなくない。___いや、できないんです」
ごめんなさい、と言い、彼の方を見る。
彼は夕日に照らされながら、少し悲し気な顔をしていた。
初対面だとしても、そんな顔はさせたくなかったと、断った私が思うのは変だろうか。
目の前の彼が何かを言おうとした時、彼の後ろから三人の人影が来るのが見えた。
「じゃあ、そろそろ帰ります」
「あぁ、引き留めてすまなかったね」
「いえ.....」
彼に背を向けて歩き出そうとしたが、最後に振り向いてこう言った。
「.........貴方の名前はなんですか?」
「___ワンダーランズショータイムの演出家、神代類だよ」
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こーらふろーと(プロフ) - 麗紅花さん» コメントありがとうございます!亀投稿ですが、じっくりと待って頂けると嬉しいです! (2022年5月30日 2時) (レス) @page19 id: d3b8f2bb05 (このIDを非表示/違反報告)
麗紅花(プロフ) - 良いですね!ワンダショー(特に類君)は夢主を助けるみたいな展開でありつつ、夢主も自分の本当の思いを蘇らせる……面白い話ですね。話の展開も良いし、何より好みの話ですので続きが気になります。ですので、更新は何時までも待っています! (2022年5月25日 21時) (レス) @page19 id: ba1809d3dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こーらふろーと | 作成日時:2022年4月16日 13時