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6話 ページ6

突然話しかけてきた紫髪の人の発言に驚き、後ろに後退る。
頭が真っ白になるというのは、この事だろう。
目の前の人物は、自分の問いかけへの返事を待っているように、何も言わない。

「.....人違いではないですか?」
「いや、君で間違いないよ」
何の確証を持って言っているのか、と思った時、彼はタブレットを取り出す。
「....これ、君だよね?」
そこに映っていたのは、幼かった自分がショーをしている動画。
『天才手品師少女!稲荷A』
___それは、まだ仮面を着けていなかった時。

「...!...どうして...これを?」
「あれほどの技術を持っている人物が、初めてであんなできるわけが無い..そう考えて調べたんだよ」
彼は頭が回るのだろう、と初対面でも思えるほど、彼は淡々と物事だけを話した。
これ以上、誤魔化すことは無理だと悟った私は振り返り、その場を走り去ろうとする。

「__待って」
パシッと手首を掴まれる。
『あの時』と同じ感覚に少し体が震えたが、ここで動揺したら駄目だ。
この人は違う。別人だ。
「...な、なんですか?」
震える声で、そう問いかけた所で、嫌な予感が頭を過る。
まさか、これを材料に脅されるのではないか___

「__ありがとう」
「....え?」
予想外の言葉に、そう言葉を漏らす。
「僕たちを....ショーを守ってくれて」
「あ、あの時の...?」
そう私が言うと彼は、やっぱり君なんだと納得したように言う。
....しまった。墓穴を掘ってしまった。

「あの後、君は見ていないかもしれないけど、ショーを見た観客は大興奮だったよ」
「そうですか....よかった」
本心からそう思う。
誰かの救いになれたなら、良かったと。
「....てっきり脅されるかと思いました」
「おや...僕がそんな事できると思うかい?」
「......」
できそう、という言葉を飲み込み、沈黙する。
それをイエスと取ったのか、ノーと取ったのかはわからないけれど、彼は顎に手を置く。

「....感謝を伝えたかったのもあるけど、もう一つ。君に用があったんだ」
私が訝しげに彼を見ると、彼は微笑んで予想もしないことを口に出した。
















「____僕達と一緒にショーをやらないかい?」














彼の黄金色の猫のような目が細まった。

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こーらふろーと(プロフ) - 麗紅花さん» コメントありがとうございます!亀投稿ですが、じっくりと待って頂けると嬉しいです! (2022年5月30日 2時) (レス) @page19 id: d3b8f2bb05 (このIDを非表示/違反報告)
麗紅花(プロフ) - 良いですね!ワンダショー(特に類君)は夢主を助けるみたいな展開でありつつ、夢主も自分の本当の思いを蘇らせる……面白い話ですね。話の展開も良いし、何より好みの話ですので続きが気になります。ですので、更新は何時までも待っています! (2022年5月25日 21時) (レス) @page19 id: ba1809d3dd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こーらふろーと | 作成日時:2022年4月16日 13時

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